そう言ってくれる義母に甘え、仕事に集中しキャリアを積んだ。ひとみさんが勤めるのは地方で有名な企業。あの頃は定時という概念はなく、毎日19時帰宅が当たり前だったそうだ。
そんな中でも仕事を続けられたのは、学校や保育園から帰宅した子供たちの面倒を義父母が見てくれていたからだと語る。
子供たちも義父母が大好きで、週末は大きな公園へ行き自転車の練習や虫やメダカの採り方を教えてもらっていたようだ。
二世帯同居はプライベートが守られなかったり姑との距離感が掴めなかったり、逃げ出してしまいたいと後悔する人が多い。しかしひとみさんの場合は子煩悩の義父母のおかげで、慌ただしくも楽しい、幸せな日々を過ごしていたという。
しかしそんな幸せな日々はずっと続くわけでもなく、不運はいきなり襲い掛かるのであった。
それまで元気だった義母が、急に不調と食欲不振を訴え始めたのだった。
検査すると大腸癌を患っていることが発覚。思った以上に進行は早く、懸命な介護のもと72歳で他界したのだった。
約1年半の介護休暇を取得し、ほとんど付きっきりで介護していたひとみさん。そのときの状況を、目を赤くしながらこう語った。
「夫は『長男嫁なんだから介護は当たり前』みたいな感じでしたね。義父も病院に行ったりしてましたが手続き関係や買い物はすべて私。
会社の介護休暇制度が整っていたので、私も介護に専念できましたよ。子供たちのことをとても可愛がってくれたので、義母の介護は辛くはなかったです。
弱っていく義母を見ながら本当に悲しくなり、こんなにいい義母は他にいない……と思う毎日でした。義母がいなかったら、家事育児に非協力的で亭主関白すぎる夫とはとっくに離婚してたかもしれません(笑)」
義母が他界したとき、末っ子の長女も小学生。手はかからなくなったが、息子たちの部活動や受験などのイベントが重なり、子供が小さいときの大変さとは違う、バタバタな日々を過ごすのであった。
その数年後、4人の子供たちは全員、県内の専門学校または大学へ進学し無事に就職が決まった。