高い学力が求められる中学受験を避けようとする、いわゆる「中受回避」組が増え、代わりに小学校受験人気が再加熱傾向にあるという。そこで、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう指摘する。
「小学校受験の人気が高まった理由は、中受回避だけではありません。中学受験対策ができる進学校系小学校に入れたいという親御さん、また大学まで付属のある名門小へ入れたいご家庭など、ニーズは多様化しているんですよね。
いずれにしても経済的な問題、価値観による夫婦間の対立もよく聞く話。受験による家庭内不和やお子さんのストレスなどには注意が必要です」
今回は、SNSでお子さんの小学校受験について時々ボヤくことで「ストレスを小出しにしてきた」という40代女性に話を聞いた。
「子どもの小学校受験本番を目前に控えていますが、はっきり言ってうちは準備万端です!志望校のうち、どれかには受かるだろうと思っています」
こう語るのは勤務医を夫に持つ、専業主婦の桑嶋かの子さん(仮名)。
「夫には開業して欲しかったし、開業すると思っていたんですけれど、金より人助けとかキレイごとを優先する医者なので、安月給で基幹病院に勤務しています」
安月給と言っても、かの子さんの夫の年収は1500万弱。
「私は進学校といわれる私立校に通いましたが、国立大に落ちて私立の女子大に入った過去があります。結果的に、国立大に行った友達はいい男に出会えなかったと言っていたし、行った私立の女子大は私にとても合っていました」
自身の経験もあり、かの子さんは一人娘を大学までエスカレーター式に進学できる私立小に入れたいと考えるようになった。
「夫は最初から小受に反対でした。『公立でフツーの社会に揉まれるべき』『お勉強にお行儀なんて、こまっしゃくれたガキになってほしくない』とか言って」
夫は幼少より学校関係はすべて公立。医学部に落ちたあとの1浪時代以外は塾・予備校に通った経験すらない。経済感覚も庶民的だ。国立大の医学部出身者にはこのような家庭環境に育った人も少なくないと感じる、とかの子さん。
「夫の親は中小企業経営者です。はっきり言ってケチだし、子どもの教育や受験にお金をかける奴なんて過保護で虚栄心しかないバカだと思ってるフシがあります」
しかし、かの子さんは義実家の価値観などものともせず、かなり早い段階から小学校受験を視野に入れていた。実は幼稚園受験をさせたかったが、かの子さんが妊娠と流産を経験し、心身ともに落ち込んだ時期と重なり断念したという。
「とにかく小受は悲願だったので、夫が反対しようが、何としてでも成し遂げたかったんです」
夫の弱点は娘だ。かの子さんは、早い段階で娘を取り込み、わけもわからないまま娘が「〇〇小学校に行きたいの」と父親に訴えるよう「調教」することに成功し、淡々と受験準備を進めていった。
「夫は私が娘に入れ知恵したことなどお見通しでしたが、仕事が忙しいので本格的に反対することなく、結局、私が強引に受験準備を始めた形です」
しかし、夫が反対したままの状態を放置したことが、後に大きな問題となる...。
記事の後半では、かの子さん一家が娘さんの「小受」のために1000万円も課金してきた話や、実家を巻き込んだお受験バトルの結末についてお伝えする。
取材/文 中小林亜紀
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