今回のことで、大掃除や買物・料理などを帰省した子供やその家族にも少しは手伝ってもらった方がコミュニケーションづくりに繋がるのではないか、と考えるに至った朱美さん。
「最近は姑の立場なんて弱いものです。お嫁さんを傷つけちゃいけないとか、イビりだと思われないようにとか、それこそコンプライアンスみたいなことばかり気になって。うちの主人も会社からしょっちゅうそんなことを言われるようで、私も影響されてますね」
掃除も料理もほぼ何も手伝ってもらわなかったせいで嫁や孫を所在ない気持ちにさせたのかもしれない、と自分自身の行動を反省する謙虚な朱美さんだが、それにしても解せなかったのが嫁の「空気の読めなさ」と「コミュニケーションのなさ」だった。
「『何か手伝いましょうか』と聞かれたわけでもないのですが、お手伝いしてほしいと誘わなかった私にも責任はあるんでしょう。
ただ、とにかく出された物を食べ、自分が使ったお皿やグラスだけは運ぶ、みんなが使った物や料理の皿は片付けない、気を使ってうちの娘やその家族に話しかけたりすることもしないんです」
本音と建前を使い分けるのは日本人の悪しき性質と考える人もいるだろうが、朱美さんはこうした日本人気質が嫌いではない。
「『お先にどうぞ』『いえいえ、そちらがお先にどうぞ』みたいな日本人ならではのまだるっこしいやりとりってありますよね。ああいうのを否定する人もいるけど、私は日本人の謙虚さはこうした『まず他人に勧める』といった姿勢から生まれたものだと思ってます」
お風呂を勧めたとき、「いえいえ、お義父さんお義母さんお先にどうぞ」という返事が返ってくることを想像していた朱美さんだったが、嫁は「はーい」と言って7歳の孫を連れて一番風呂に入った。
「以前泊まりがけで帰省した時にも、気を使われた記憶はやっぱりありません。別にそれでいいんですけど、表面的でも構わないから一旦は遠慮するくらいの方が相手への配慮が感じられて人間関係がスムーズになると思うんです。日頃周りの人とうまくやれているのか心配になりますね」
☆次回、たまり続ける姑の鬱憤。その後の家族の様子を詳報する☆
取材/文 中小林亜紀