「空いた口が塞がりませんでした。ただ、もうそのときには後には引けない、そんな感じで結局正社員を目指し、職を獲得。今、2年目です」。
これが現実だと涼さんは嘆く。
「夫は当たり前のように飲みにもいくし、出張もある。もちろん、それでも家事の分担を強く迫るべきだと言われればそうでしょうが、当時の私にはできませんでした。結局正社員として働いている今も家事分担のほとんどは私です」。
涼さんが強く夫に出れないのにはいくつかの理由がある。
「ひとつは戦うのが面倒臭いんです。今から家事をやれと言えば、相手は明らかに嫌悪感を示します。それに対応するのがもう嫌なんです。もうひとつは収入格差ですね。結局、長らく社員として働いてきた夫の方が給料がいいから、なんとなく引け目に感じてしまうんですよね」。
こんな具合に全力で働きながら家事をこなしてきた涼さんに転機が訪れる。
「役職がつくことになったんです。2年でこんなところまで来れるとは思っていませんでしたが、会社が認めてくれたことは心の底から嬉しかったです。対して夫は50代に入ってから、帰宅も早くなってきたので、いい機会だと思い、家事分担の見直しを提案したんですが…」。
【後編】では、涼さんの提案をなかなか飲み込めない夫とそれを見た子どもたちの意見について話をさらに深掘りしていきたい。
取材・文/悠木 律
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