世間のご夫婦やカップルは、お互いをどのように呼び合っておられるだろうか？過去のさまざまなアンケート調査結果を調べてみると、名前から派生したニックネームや名前そのもの、という回答が多数派を占める。また、「ママ」「お父さん」など家庭内での「肩書」呼びも少なくない。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこうアドバイスする。
「学校ではニックネームを禁じる動きなども見られますが、その賛否はあるとしても、家庭内においても、大切なパートナーの気持ちを無視した呼び方は避けるべきです。本人はちょっとした冗談のつもりでも、受け手の苦痛は計り知れません。無神経な言動の一つ一つが蓄積してモラハラと受け取られ、熟年離婚の引き金を引くケースもありますよ」。
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延岡美沙子さん（仮名）は結婚16年目の45歳。パートタイマーとして家計を支えながら家事に育児に奮闘する生活を長く続けてきた。
この春、上の子供が高校生、下の子が中学2年と大きくなり、ようやく落ち着いた時間の過ごし方ができると喜んでいた矢先、夫のことで悩むようになったと話す。美沙子さんは、夫に対する愚痴を誰にも言えず、SNS上で別人格を作ってこぼすしかない、と恥ずかしそうに語った。
「夫からオバさん扱いされてるなんて、周りの友達に知られるのが嫌なんです。きっと自分では、まだそこまでオバさんぽくないと思ってる証拠ですよね。でも、これが結構深刻で」
美沙子さんは、夫から「オバさん」などと冗談めかして言われることをひどく苦痛に感じている。夫には再三抗議しているが、なぜかやめてくれないのだそう。
「一度そういうノリになると、引っ込みがつかないというか、もう素直に褒めるとかできなくなるんじゃないかと思うんです。これからずっとあんな感じだと思うと、うんざりします」
夫が美沙子さんをオバさんイジリするようになったきっかけとは何だったのだろうか。
「子供が保育園の時から仲良くしているご家族がいるんですが、今年の春、その家族と一緒に庭でバーベキューをしたんです。その時、私が結構何種類もの食材を買い忘れたんですね。そうしたらうちの夫が『ちょっとオバさん、その忘れ方、やばいって』と私にツッコミを入れて、その言い方が面白かったらしく、子供たちが爆笑したんです」
夫はその後、酔いも手伝ってか、何度も美沙子さんを「オバさん」「オバちゃん」と呼んでからかったのだそうだ。美沙子さんは、冗談に対して本気で抗議するのも大人げないし、その場限りのことだと思い、笑いながら「ちょっと何なのよ～？」などとゆるめに返してお茶を濁した。
「たぶんその日からです。気軽にオバさんとか言ってくるようになったのは。急にからかうようになったんですよね。たとえば私が洗面所で髪を梳かしていると、『オバはんは白髪が気になるお年頃ですな』とか、Tシャツに下着の線が透けていたのでしょうか。『ブラに肉がのってる～、オバさんなかなかキテますね～』とか」
美沙子さんが日頃夫を「オジさん」イジりしていることへの報復という線は考えられないのだろうか。
「うちの夫は以前から冗談口調で話すことが多く、ノリがいい人だと勘違いされやすいのですが、実は自分はイジられるのがめちゃくちゃ嫌い。私がオジさんイジりなどしようものならブチ切れるんじゃないでしょうか。ずけずけ言う人に限って打たれ弱いって、あるあるじゃないです？」
夫の美沙子さんに対するイジりは、服装にまで及ぶという。
「ボーダー柄が重宝するのでよく着るんですが、先日も私がボーダー柄の服を着ていたら『おいそれ何？ ドリフの囚人コントじゃん』とか、今の若い人は誰もわからないようなツッコミをしてきたんです。私だってリアルタイムでは知りませんし（苦笑）」
囚人コント呼ばわりには思わず吹き出してしまった美沙子さん。夫が調子に乗ってしまう一因は、夫の不快なコメントに対してもついつい笑ってしまう彼女の鷹揚な性格も災いしているのかもしれない。
後編では、さらに加速していく中傷と、夫の目に余る態度に迫る。
★【後編】エスカレートする妻への「オバさん」イジり。リビングではデリカシーゼロの夫がとった、ベッド上でのあり得ない行動とは……!?★
取材/文:中小林亜紀
