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気の毒なリポビタンD……本当は炎上してなかったのに「非実在型ネット炎上」の餌食に!

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

先週、リポビタンDの広告が「性差別」で「時代遅れ」だと派手にバッシングされたんですが、コトの発端は男女のタレントを起用した車内広告でした。

【男性タレント版】
「時代が変わると疲れも変わりますからね」

【女性タレント版】
「仕事、育児、家事。3人自分が欲しくないですか?」

このコピーに対し「女性だけが仕事、育児、家事を押し付けられている」「女性だけ大変な目に遭わせるのか」と噛み付いた人たちがいるそうなんですが……そ、そうなの?

あの、コレって男女差別じゃなくて(センス云々はともかく)、実際に「仕事×育児×家事」で大変な女性がいて、その人をターゲットに広告を打っているだけでは。

「こういう広告のせいで、女性に押し付ける世界が続いてしまうんだ」という批判もありましたが、そもそも広告は社会を変えるためのツールではないので、流石にそこは諦めましょう。

広告って想定するターゲットに商品を購入してもらうためのモノですからね、もしリポDユーザー・見込み客が「この広告は嫌い、リポD買わない」なら、それは仕方のないこと。広告主も覚悟のうえです。でも、

「大企業は自分より強いし、何を言っても言い返してこない、金もあるんだからもっと私の要望に応えるべき、顧客じゃないけど」

だったなら「アナタは広告のターゲットではありません」と無視されても仕方ない。それ以上でもそれ以下でもありません。実際、騒動に対する大正製薬の広報コメントも「回答を控えさせていただきます」でした。

仮に男性版のコピーを「仕事、育児、家事。3人~」に替えても「そんな男は実在しない!」ってクレームつける人が現れるだろうし、夫婦です的に育児シェアしているカップルを描けば「シングルマザーの気持ちを考えろ!」って誰かしら文句つけるかと。

いつの日か界隈が「広告は想定しうる全ての育児パターンを描き分けるべき」とか言い出しそうで怖いんですが、こういうのマジメに相手してると、今後「子育てに奔走する女性」みたいな広告描写は一切NGになります。もはや表現の自由の「自殺」です。無論そんなバカな話はありません。

実はネット炎上していなかった

とはいえ今回の騒動、実はよくある「一部クレーマーによるネット炎上」ではなくて、

「非実在型ネット炎上」

と呼ばれる看過できないタイプの炎上だったんです。

本件はメディアが取り上げたことで一気に認知されたんですが、報じられる前はごく一部の限られた人たちによる批判のみ、燃え広がる兆候も見られませんでした。

実際、散発的な殴り合い程度しか起きてなかったんですよ。炎上と呼ぶには火力不足、つまり炎上を起こせるほどの賛同者がいなかったんですが……

メディアがこの「一部批判」を報じた瞬間、あたかも大勢がこの広告に怒っているかのように伝わってしまい、それに対する反発が起こり、注目も集まり、他のメディアも後追いで報じたことで、この事案が「ネット上でリポDに対する炎上が起きているんだ」という世間の認知を獲得してしまったのです。

実は起きてなかったネット炎上。お気の毒な……まあ発端となったメディア記事は「SNSで批判意見が上がっている」程度の表記だったので、さほど悪意は無かったと思います。

でもこういうの繰り返していくと、やがて広告表現そのものが委縮し、広告出稿が意味を持たなくなる。メディアが自分の首を絞める行為でもあるのです。

今回、大正製薬の広報さんは努めてクールに対処しましたが、あの言い方だとクレーマーには全く響かないので、

「そういう解釈される方がいるんですね、多様性ですね」

くらいスカしたコメントでも良かったのでは。あの界隈、相手にされないと分かるとすぐ諦めて、他のターゲットを探し始めるので……。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。

 

 



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