■中空リアスポイラーやスペアタイヤレスまでして軽量化した、スパルタンなType Sも登場
S2000は、2001年、2003年、そして2005年と、2年おきにマイナーチェンジが行われており、ヘッドライトやリアコンビネーションランプ、前後バンパーのデザイン変更、インテリアのデザイン変更、新デザインの17インチアルミホイール、ブレーキ強化、ボディ剛性強化など、マイチェンを重ねるごとに、走りのポテンシャルが引き上げられていきました。
特に2005年のマイナーチェンジでは、エンジンの排気量を2.2リッターに増やし、ファンが期待していた「モアパワー!!」の要望に対応。そんなS2000の集大成といえるモデルが、2007年10月に登場したType Sです。
市販車でできるレベルギリギリの、ど派手なエアロパーツによって空力性能にとことんこだわり、サスペンションもフロント・リア共にダンパー、スプリング、スタビライザーが強化・最適化され、ロール剛性と応答性を向上。極めつけは軽量化で、スペアタイヤとジャッキを廃して、応急パンク修理キットを搭載するほどの徹底ぶり。リアスポイラーも中空化しており重量増を最低限にとどめていました。
このように、ほとんどのオーナーが公道でしか乗らないカタログモデルに、ここまで必要なのかと思えるほどのこだわりぶりで、S2000は、当時のホンダの夢が詰め込まれていたモデルだったと思います。効率が求められる昨今においては、こんな尖ったモデルはもう望めないでしょう。
現在、S2000の中古車は、Type Sの場合は、程度の良い個体だと500万円以上まで高騰しており、標準モデルであっても200~300万円あたりと、なかなか手が出せるクルマではなくなってしまいました。
単なる速さで比べれば、現行型のシビックタイプRのほうが優れており、また圧倒的に安心して乗っていられますが、S2000は、クルマが好きでたまらない(当時の)ホンダ社員たちのロマンが詰まった、ホンダの名車なのです。
Text:Tachibana Kazunori,MMM-Production
Photo:HONDA