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R34は4500万円で落札!なぜ国産旧車は高騰しているのか?

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安全装備や自動運転でますます高額化している現代のクルマ。上手に購入する方法は? さらに、所有してからも様々なトラブルやアクシデントが起きるのがカーライフ。それら障害を難なくこなし、より楽しくお得にクルマと付き合う方法を自動車ジャーナリスト吉川賢一がお伝えします。

国産の旧車がいま、高騰しています。例えば、H14年式の日産R34型スカイラインGT-R Vspec2 Nurが4500万円で、H7年式ホンダ初代NSXタイプRが2550万円で、H10年式スバルインプレッサ22B-STIが2870万円で落札、といったように、新車販売価格の2倍から5倍にもなっています。

1998年に登場した、R34スカイラインGT-R 。2021年12月に行われた業者向けオートオークションで、H14年式 Vspec2 Nurが4500万円で落札された

なぜこれほどまでに高騰しているのでしょうか。中古車買取店の現役担当者から聞いた、旧車高騰のカラクリについてご紹介します。

 

■多くは米国からの需要で高騰

もともと、国内の自動車マニアの間では、60年代、70年代のポルシェやフェラーリ、トヨタ2000GT、ハコスカなど、生産台数が極端に少ないスポーツカーが価値を落とさずに流通していました。前のオーナーが手放すと、次のオーナーの手に渡り、ガレージで大切に保管されながら余生を過ごすクラシックカー。公道を走っている姿を見かけると、「粋」に感じたものです。

1991年にFC3SサバンナRX-7の後継モデルとしてデビューしたFD3S型RX-7。2021年11月のオートオークションで、H14年式のスピリットRタイプAが2320万円で落札

ですが、いま高騰しているのは、80年代後半から90年代にかけて販売されていた「ネオクラシック」と呼ばれるクルマたち。具体的には、R32からR34あたりの第2世代スカイラインGT-RやトヨタA80スープラ、初代NSX、S2000、マツダRX-7(FC型、FD型)、スバルインプレッサWRX 22B、などです。

これらは生産台数も少なく、希少価値のあるクルマであることは間違いないですが、これほどまでに高騰している理由は、中古車買取専門店の担当者によると、海外からの熱烈な需要が原因、とのこと。

1993年に登場したトヨタA80型スープラ。2022年1月のオートオークションで、H9年式 RZ-Sが800万円で落札

一番大きなきっかけは、米国の「25年ルール」。米国の輸入ルールで、右ハンドル車は製造年から25年が経たないと輸入することができないルールとなっています。国産旧車の価格高騰が話題となり始めたのはおよそ2015年頃、ちょうど1990年前後の右ハンドル車が、輸入解禁となった年と重なります。

1990年といえば、日本はバブル経済がはじける直前、日産やトヨタ、ホンダ、マツダなどから、国産スポーツカーが多く登場した黄金期でした。この手の国産スポーツカーの一部は海外でも販売されていましたが、その数はわずかであり、ファンの需要に応えるため、米国の輸入業者は輸入解禁を待って入手しているようです。

1990年にデビューした初代NSX。その2年後の1992年に追加されたのが、ピュアレーシングスポーツカーのNSXタイプR。2021年11月のオートオークションではH7年式NSX タイプRが2550万円で落札された

1998年登場のR34型スカイラインGT-Rが4500万円で落札されたのも、将来的に高値で売れることが分かっているため、業者が事前に確保したものであろう(買い取り専門店担当者)、とのこと。欲しいクルマの為ならいくらでも出す、というファンは少なくないようです。

 

■米国で日本車が人気となったきっかけは「映画」

しかし、そもそもなぜ米国で古い日本車の人気があるのでしょうか。そのきっかけになったのは、映画「The Fast and the Furious(2001年公開)」、邦題「ワイルド・スピード」です。映画のなかでは、ホンダシビックや日産240SXなど、現地で販売していた日本の安いスポーツカーをドレスアップし、夜な夜な見せびらかしに集まる、というシーンがあり、これをきっかけに、これまで日本のスポーツカーをほとんど知らなかった米国の人たちに、広く知られるようになりました。

1998年に登場した、インプレッサWRXの限定生産モデル、スバルインプレッサ22B-STI。2022年2月のオートオークションで、H10年式の22B-STIが2870万円で落札

若いときにこの映画の影響を受けた人たちが成熟し、お金を持つようになったいま、当時憧れたこれらのモデルを買いあさっている、というのが、いまの国産旧車価格高騰の理由です。こうした日本の90年代スポーツカーを中心とするカスタマイズされた日本車は、JDM「Japanese domestic market(日本国内市場)」と呼ばれており、まだしばらくは、この流れが続くものとみられています。

 

■ゲームや漫画でも知られるように

しかしながら、国産旧車のすべてが、米国へ輸出されているわけではなく、昨今は、香港やマレーシア、シンガポール、オーストラリア、イギリスなどへも多く輸出されている、とのこと。映画「ワイルド・スピード」のお陰もありますが、「グランツーリスモ」のようなテレビゲームや、「頭文字D」といった漫画文化が広く海外でも流行っていったことで、世界中の自動車ファンが、国内外のクルマを知るようになったのでしょう。

特にマレーシアへは、2018年式のFK8型シビックタイプRや、S660など、新しめの国産スポーツカーが多く輸出され、現地の自動車販売店では、2~3倍もの超高額で販売されています。コレクターたちは、まさにミニカーを集める要領で、次々に購入していくようです。

 

■国産メーカーも旧車の復刻パーツをリリースするように

そんな旧車の需要に、メーカーも応えています。トヨタの「GRヘリテージパーツプロジェクト」では、2020年7月、なかでもリクエストが多かった2000GT用パーツ復刻を発表し、A70/A80スープラのパーツ復刻や、40型ランドクルーザー用のパーツ復刻も開始されています。日産も、旧車のパーツを少数生産するためのプレス成型技術を発表しており、今後の展開が期待されています。

かつて憧れた国産スポーツカーが、多く海外に輸出されていってしまうのは、悲しいことではありますが、海外で大切にされるのであれば、クルマにとってはいいことなのかも知れません。

TEXT:Kenichi Yoshikawa
PHOTO:TOYOTA,NISSAN,HONDA,MAZDA,SUBARU
EDIT:Takashi Ogiyama



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