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官能とコスパの両立!ホンダVTECエンジンは何を目指しているのか?

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安全装備や自動運転でますます高額化している現代のクルマ。上手に購入する方法は? さらに、所有してからも様々なトラブルやアクシデントが起きるのがカーライフ。それら障害を難なくこなし、より楽しくお得にクルマと付き合う方法を自動車ジャーナリスト吉川賢一がお伝えします。

かつて、80年代から90年代のホンダ製スポーツカーに搭載されていたVTEC NA(自然吸気)エンジンは、パフォーマンスと環境性能に優れたエンジンだった。昨今は、VTECもターボ付きでトルク重視が主流となっているが、限られた車種にしか搭載されなかったVTEC NAエンジンは、スポーツカーファンにとって一つの歓びでもあり、仮にこのエンジンがなければ「タイプR」の魅力は半減してしまう、といっても過言ではないほど、重要なものだった。

TYPE RにVTECエンジンは欠かせない。1992年にデビューした「NSX-R」の考え方を身近なライトウエイトスポーツである「インテグラ」に採り入れて開発された初代「インテグラ TYPE R」

「名機」と名高いVTECエンジン。このエンジンがあったからこそ、ホンダは数々のスポーツモデルを生み出すことができた。高回転用・低回転用という2種類のカムを使い分け、痛快なスポーツ性能と日常の扱いやすさや経済性を高次元に両立させる、Honda独創の可変バルブタイミング・リフト機構「VTEC」の魅力と今後について考えてみよう。

 

■90年代のスポーツカーに活路を与えてくれたVTEC

VTECは、ホンダのエンジン技術の「アイコン」であり、先日登場した新型シビックにも採用されている。VTECの正式名称は「バリアブル・バルブ(V) タイミング(T) アンド リフト・エレクトロニック(E) コントロール(C)システム」。燃費改善を狙いに排気量を下げた分、パワーが必要となる高回転域では最大限パフォーマンスが発揮できるよう、エンジンバルブのリフト量とタイミングを可変するシステムだ。最初に搭載されたのは、1989年登場のインテグラであった。

世界で初めてVTECエンジンが搭載された初代インテグラ(1989年~)

軽量でサイズもコンパクトなエンジンなのに、高いパフォーマンスが得られるとして、タイプRを中心に、スポーツグレードへ搭載されてきた。低回転での扱いやすさと、中回転以上でドカンとパワーが出る特性が特徴的で、90年代のDOHC VTECには、神話的な人気があった。

リッターあたり116馬力を発生させるVTECエンジン「B16B 98 spec.R」を搭載したシビック TYPE R

パワーを上げるには、排気量を上げて、ターボやスーパーチャージャーで加給するなど、環境保全とは真逆の方向へと歩まざるを得なかった90年代。だが、ホンダはこのVTEC技術を用いて、1クラス上の高出力と低燃費、低エミッションなど、相反する性能を両立した。この技術があったからこそ、インテグラやシビックのタイプR、そして1999年に登場したピュアスポーツオープンカーS2000など、リッター100ps超えのNAエンジン搭載車を、生みだすことができたのだ。

 

■環境達成技術として、軽やハイブリッド車へも搭載

VTECは、環境達成技術として、いまも進化をし続けていて、ハイブリッドカーや軽自動車にも搭載されるようになった。排気量を下げながらもパワーが出せること、軽量かつコンパクトなエンジンなので、エンジンルーム内のパッケージングは有利となり、「キビキビした走り」にも大いに貢献している。

また、インスパイア(2003)や、レジェンド(2015)に搭載された、V型6気筒エンジン向けのVCM(Variable Cylinder Management:走行状態によって自動的にエンジンの「3分の1、半分」を休ませてガソリンを節約する気筒休止技術)など、複雑な制御も行えるように進化をしている。

ホンダHPを見ると、さまざまなモデルにVTECが採用されている。VCMとはVariable Cylinder Management(可変シリンダー制御)のことで、6気筒エンジン向けに開発された気筒休止システムのこと

「速さ」を目的として開発された、シビック TYPE Rに搭載している2.0L VTEC TURBOエンジンも進化している。これまでのVTECの構造とは違い、排気バルブ側にVTECを採用。吸気側は、ターボがあるので、リフト量に頼らずとも大量の空気を押し込むことができるので、排気バルブ側でしっかりと「掃ききる」ことで、ポンピングロスやノッキングを低減させている。

「史上最強のタイプR」として生まれたFK8型シビックタイプR。エンジンの最大出力は235 kW(320ps)/6500 rpm、最大トルクは400 Nm(40.8 kgfm)/2500-4500rpmを発生

吸排気を緻密に制御したことで、燃焼効率が高まり、1サイズほど小さくて軽い、高レスポンスのターボチャージャーを使うことができた。その結果、史上最強にパワフルでハイレスポンスな、FK8型シビック TYPE Rが誕生したのだ。

 

■DOHC VTEC(NA)は、もう登場することはない

かつてのような、NAのVTECが再び誕生するのか、というのは興味深いところだが、残念ながら、その可能性は低いと考えられる。スポーツカーには、分かりやすい「パフォーマンス」が必要だ。購入者が実際に試すことがないにしても、0-400m加速や、サーキットのタイムアタックなどは、購入の大きな動機となる。国産スポーツカーが、海外のサーキットにまで出向いてタイムアタックに挑むのは、絶好のアピールチャンスであるからだ。

VTECにはターボが必須となっている

そのため、スポーツカーは、今後もモアパワーは避けられず、クルマの軽量化、環境性能、なども加味すれば、ダウンサイジングターボエンジンは、今後も必須のアイテムとなり続けるはずだ。基本的に、エンジンパワーを引き出すには、エンジン内に多くの空気を取り入れる必要がある。そうなると、NAエンジンでは、たとえVTECを改良しようとも、エンジン内に吸い込める空気の量には限界がある。かつてのVTECのようなNAエンジンの復権は、残念ながら期待できない。

次期型のシビックタイプR(FL型)の市販は2022年と発表されているが、エンジンに関しては、まだ何のアナウンスもされていない。だたし、パフォーマンスは、先代KF8型を抜くことが、必須条件となるはず。FL型のタイプRのエンジンが、どんな姿、どんなスペックで登場するのか、いまから楽しみで仕方がない。

Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:HONDA
Edit:Takashi Ogiyama

ホンダVTECエンジンの歴史についてはこちら



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