いっぱい乗って、いっぱい遊んできた貴兄の相棒です
ピックアップトラックに興味のある人がどのくらいいるかわかりませんが、確実に存在するのは確かです。近年のトヨタ・ハイラックスの売り上げがそれを立証していて、かなり順調に販売を継続しています。コロナ禍のキャンプブームと相まって、それ以前よりもマーケットは広がっているようですね。
そんなトレンドにうまい具合に乗り始めたクルマがあります。つい先月（2月）発売を開始したばかりの三菱トライトンがそうです。事前予約は月販予定台数200台を余裕で超える1300台。う〜ん、すごい人気です。三菱のピックアップ登場にビビッと反応した人の中の一人として個人的に言わせてもらうと、かなり良さそう。デザイン、パワーソース、ユーティリティなど、資料に目を通すだけでワクワクします。
あまり知られていないかもしれませんが、三菱製ピックアップの歴史は長く、スタートは1978年リリースのフォルテまで遡ります。アメリカではOEMとしてダッジやプリムスブランドでも売られていました。そしてそれが80年代にストラーダと進化し、トライトンへと生まれ変わります。
それじゃ新型トライトンのハードウェアはその続きかといえばそうではありません。デザインはもちろん、ラダー式のフレーム、リアのリーフリジット式サスペンション、ディーゼルエンジン、インターフェイスのデジタルプラットフォームすべてが新設計となります。要するに既存の物を進化させたのではなく、オールニューでつくり上げました。
旧態依然のイメージが強いピックアップトラックをここまで新しくしたのには理由があります。それは、このクルマが世界戦略車だからです。なんたって販売するのは130カ国以上で、年間生産台数は三菱ブランドの中のトップに位置します。言うなれば三菱の屋台骨。軽自動車のイメージが強いブランドでもありますが、実はこんなところにフラッグシップモデルが隠されていたんですね。
ではその特徴ですが、グレードは2つで装備違いのGLSとGSRがあります。オーバーフェンダーなどで架装された上位グレードがGSR。生産はタイで、国によってはシングルキャブ、クラブキャブ、ダブルキャブなど仕様が細かく分けられています。ただ、日本は4ドアのダブルキャブ（5名乗車）のみの設定。理由はトヨタ・ハイラックスに準じたからでしょう。初めから個性を出しすぎてズッコケてしまっては仕方ないですからね。そもそもニッチなマーケット向けだけに冒険はできないという考えでいいのではないでしょうか。
とはいえ、個人的にはキャビン内にフロントシートとその後にちょっとしたスペースを持つクラブキャブが好み。学生時代乗り回していたダットサントラック720がそうで、かなり気に入っていました。確かに4ドアの方がSUV的で利便性が高いのはわかりますが、スタイリングのかっこよさは2ドアに負けます。それに全長5300mm以下におさまるかもしれないし……。廉価版としてそんな仕様が販売されれば、カスタムベースとしてのニーズに応えられそうです。
エンジンは2.4リッター直4ディーゼルターボで最高出力150kWを発揮します。組み合わされるのは6速AT。駆動方式は4WD、2WD切り替え式で、三菱得意のスーパーローギアが装備されます。センターデフだけでなくリアデフまで機械式でロックできる機構付きなのが好みです。でもって、ドライブモードはノーマルとエコの他に、グラベル（砂利道）/スノー/マッド（泥）/サンド（砂）/ロック（岩）があります。電子的に各タイヤに伝わる出力やブレーキの力を細かく制御して、精緻なコントロールを行います。
なので、これをオフロードコースで試しましたが、走破性に一点の曇りはありません。これまでジープやランドローバーを中心に世界中のオフロードコースを走り、そのパフォーマンスを試してきましたが、トライトンはかなりレベルが高いと思います。機械的に操作しなくても電子デバイスの制御でどうにでも走れてしまうんですから、イマドキですね。
オンロードもいい感じです。SUVとして評価するならディーゼルエンジンの音や振動、硬めの乗り心地などは気になりますが、ピックアップトラックとしてはものすごくよくできています。もはや荒々しい乗り味は前時代的なのでしょう。上品さのあるピックアップトラックです。
ということで、ピックアップにご興味のある方はぜひ注目を。真の大人の男こそ、こういうクルマが似合うんです。
