【前編あらすじ】
パート従業員としてアミューズメント施設に勤める砂山菜美子さん(仮名)。女性だらけの職場ではリーダー格のお局様を中心に日々いじめが横行していた。新しく赴任してきた若い男性店長が標的になった矢先、見てられなくなった菜美子さんが口出ししてしまう。そして、いじめの標的は菜美子さんに……。
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「数日したら、いつもみんなで店長の悪口大会だった朝礼後の雰囲気が全く別の物になっていました。私は直感的に、ターゲットが変わったことを悟りましたし、『他にグループライン作ったな』と思いましたね。それまでシフト調整などに使っていた業務連絡用のライングループを誰も使わなくなったんです」
菜美子さんが反論したきりになっていたグループラインが数日間水を打ったように静まり返ったことから、菜美子さんは「自分を除外した新たなグループラインを作り、何か言い合っているんだろう」と推理した。しかも、店長への悪口ラインはちゃっかり削除されていた。
「あの人、極悪ですよ。間違いないと思います。でも、私って学生の時もいじめられっこをかばっていじめに遭う、みたいなことが何度かあったから『あ、またやっちゃった』くらいで、最初はそこまで深刻に考えていなかったんです」
時間が経つにつれ、いつも笑顔で挨拶を交わしていたパート社員たちが全く笑顔を見せなくなり、挨拶を堂々と無視される場面も増えてきたという。ボス的パートが休みの日でも、他のパートは密告を恐れたのか、菜美子さんに近づこうとしなかった。
「私と親しくしているそぶりなんか見られたら自分にも矛先が向くんじゃないかって怖いんですよね。ついにほぼ全員から無視される状況になりました。情けない話です」
また、シフトの希望を聞かれてメモに書いてリーダー格の女に渡すと、先日までいじめていた男性店長に対し「砂山さんは自分の希望ばかり言って、人が少ない日に入ってくれない」と苦情を言っていたことが判った。それまで通り、都合の悪い日をNGにして申請しただけだったのだが。
「こないだまでいじめてた店長を、今度は取り込み始めたんです。店長も、標的が私に移って気持ちが楽になったんでしょうね。積極的に皆さんからの『私批判』に加担するようになりました」