店長は攻撃の対象が自分から菜美子さんに変わったことで、「いまの状態をキープしたい」と思ったのだろうか。たびたび勤務態度などについて、みんなの前で菜美子さんを注意するなどし始めたのだそう。
「私についていろんな人があることないこと店長に告げ口したり相談したりして、さらに店長が同調することで告げ口してきた奴の機嫌を取る、という幼稚極まりない導線ができあがっていきました」
不利だった形勢に変化が見られたことが嬉しかったのか、陰でかばわれていたことも知らず、菜美子さんのいじめに加担していった男性店長を「あわれな奴」と菜美子さんは一蹴する。
「情けないっていうか。自己保身のためならいくらでも他人を不幸にできる奴。心の底から軽蔑しますね。でも、負けるのが悔しいので、その時はやめませんでした」
菜美子さんをうとましく思うふりをしていた全ての人が、実は菜美子さんという鬱憤晴らしの対象を必要としていたのかもしれない。「自分じゃなくて良かった」という安堵とともに。
「本当に誰ひとり話しかけてくれなくなりました。それに、走り回っていたお客さんの子供を私が注意した場面を見てたパートが、『砂山がめちゃくちゃキツい口調でお客さんの子を叱っていて、あれではクレームに繋がる』と尾ひれをつけて密告したんです」
菜美子さんは、またしても朝礼でパート社員の針のような視線にさらされながら、店長から口頭で注意を受けた。
「べつに常識的な言葉でお子さんを注意しただけですよ、いけませんでしたか?と言うと、『砂山さんに注意されたお子さんが泣きそうになっていたというじゃないですか』と店長が突っ込んできました。完全なでっちあげです」
菜美子さんは呆れてしまった。
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