「お金が絡むと人は変わる、なんてよく言いますが、リアルにそう感じましたね。改修工事だけでなく、金銭補償が行われることが決まった途端、一部の住人から意見や権利の主張が目立ち始めたんです…」。
感情的になる人、工藤さんを悪者にする人、文句ばかり言う人…さまざまな人がいたという。
「残念だと感じたのは、文章や話を最後まで読まない、聞かない人が多かったこと。それから自分に都合よく、話を切り取る人もいました。これでは通じるものも通じません」。
さらに工藤さんを悩ませたのが常識の相違だ。
「自分の常識がいかに、通用しないか、突きつけられました。こんなこと言うと昭和の人と感じるかもしれませんが、義理とか人情とか、恩とかそういう目に見えないけれど、大切なものをどこかに置き忘れてきてしまった人が多いと感じざるをえませんでした。僕は確かに理事長になりました。でも、住人のみなさんと同じいち所有者でもあります。その事実がすっぽり抜けおちて、あたかも敵が僕であるかのようにぶつかってくる人もいましたね。本来であれば仕事と家庭に使うべき、大切な時間の多くを費やして、解決に向けて奔走していた僕ら夫婦にとって、正直これはキツかったですね」。
そんな憤りを抱えてもなお、歩みを止めなかった理由は味方になってくれた人の存在も大きいと話す。
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