ハンバーガーメニューボタン
FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
LIFESTYLE そこが知りたい! 暮らしの真相

都内一等地のタワマン億ションに欠陥発覚!異例すぎるスピード解決に漕ぎつけた「住民の知恵」が凄かった!

無料会員をしていただくと、
記事をクリップできます

新規会員登録
「あの声で とかげをくらうか ほととぎす」 この世の森羅万象のウラ側を、FORZA STYLEの取材班が徹底取材。あなたの暮らしを守る、独自レポート。

「都内、一等地のタワマン」。そう聞いて皆さんはどんな印象をお持ちだろうか。億ション、お金持ち、富裕層…そんな言葉が並ぶのではないだろうか。欠陥という言葉を思いつく人は、きっとそう多くはないだろう。

しかし、実際のところはそうでもないらしい。都内一等地であろうとどこであろうと欠陥は起こりうると話すのは、これまで多くの欠陥を見抜いてきたその道のパイオニア・日本建築検査研究所の岩山健一氏だ。

「タワーマンションは、基本的に不動産の企画や開発を行うディベロッパーがゼネコンに依頼して建築します。皆さんはディベロッパーとゼネコンの知名度が高ければ高いほど、価値のある、安全なマンションだと思うでしょう?しかし、そんなことはありません。むしろタワマンは、欠陥の宝庫。安全に建てるのが非常に難しい代物なのです」。

欠陥の宝庫…恐ろしいパワーワードである。

「脅して申し訳ないですが、それがリアルなところです。欠陥と言ってもね、違反建築である可能性がかなり高いんですよ。例えば設置されているはずの遮音壁が規定より薄い仕様になっていたりするでしょう?するともちろんうるさいですよね。でも何より問題なのは、それが耐火違反になりうること。しかし、耐火というのは有事にならないとわかりません。だからこそ、音がうるさいとか、水圧が弱いとかそういう不具合から、欠陥や違反建築を見抜く必要があるんです」。

………………………………………………

Yahoo! 配信用パラグラフ分割
©︎GettyImages

今回は多くの人が夢に描く、都内の億ションで起こったある欠陥とその欠陥に向き合った元理事長にお話を聞くことができた。訪ねたのはまさに都心の一等地。空高くそびえるマンションが今回の舞台だ。

ことの発端は「エレベーターホールで音がする」というものだったと岩山氏は話す。

「ホールに音というか人が話す声、さらに言えば、言葉まで聞こえると。これだけ聞くと怪奇現象ですよね。ディベロッパーに話をするとBGMでもかけますかと冗談めいた言葉が返ってきて、驚きましたよ」。

岩山氏に相談を求めた人物こそ、今回の主人公でもある工藤知行さんだ。このマンション元理事長である。

「工藤さんから相談を受けたときには、ほかにもいくつか欠陥と思われる事象が出ていました。機械式駐車場がよく止まるとかね。それで調査をしようということになったわけです」。

しかし調査をすると一口に言ってもマンションでは簡単にはいかない。これが戸建てと異なるところである。岩山氏はさらに述べる。

「戸建てであれば、多くは持ち主が1人または家族でしょう。ですから、合意形成が図りやすい。それに対してマンションは部屋ごとに所有者が異なるのでそう一筋縄ではいきません。しかもこの規模のマンションの調査になると数百万かかるのが一般的です。

それを管理組合負担するとなるとどうしても拒む人が出てきたり、文句を言う人が出てきたり…。それをまとめるのが理事長なんです。しかし、理事長の多くは輪番制。当事者意識を持って対応に当たることのできる聡明な人はあまりいないのが現実です」。

今回は何より、今までに例をみない速さで解決したことでも注目を集めている。

「この事例はかなりのスピード解決です。問題発覚が2019年、2021年には相手側が瑕疵を認め、2022年に工事。2023年には住民が戻ってきています。実質3年程度。マンションでこんな事例は後にも先にも見たことがありませんね」。

さっそく、元理事長に話を聞いていこう。工藤さんがこのマンションに入居したのは、2019年の春のことだった。

「初期に入居しました。購入契約はそれから2年ほど前になりますかね。入居してすぐにおかしいなと思う箇所があって、何度かディベロッパーや管理会社に問い合わせをしたんです。だって、安い買い物じゃないですから」。

この立地。無論、億ションである。

「でもいくら相談しても解決しようという意思がまるで感じられない。これはまずいぞと思って、最初の臨時総会で立候補して自ら理事長になりました。それが2019年夏のことです。岩山さんにきていただき、相談をし始めたのは秋くらいでしたね」。

なんというスピード感。

「マンションは全部で数百戸と大規模です。僕自身、理事長になったのははじめてでしたし、ましてや欠陥住宅をみたことはありませんでした。でも、いろいろ調べていくうちに、これまで住んできたマンションは欠陥に気がついていなかっただけかもと思うようになりました。大なり小なり、多くのマンションで欠陥は見つかるんじゃないかな?」。

岩山さんも賛同する。

「大きなマンションは、ディベロッパーがいて、ゼネコンがいて…と多くの人が関わってできています。だからこそ責任の所在がどうしても曖昧になりがちです。さらに言えば、現場監督や職人などの、質が明らかに低下していると言わざるを得ません。昨今の建築材料や人件費の高騰も大きな影響を与えているでしょうね。それに欠陥の多くは、壁の中、床の下と建ってしまえば見えない場所でのこと。それもどうせバレない…と手を抜くことにつながるのかもしれません」。

理事長になったもののそこに教科書はない。ここからの道のりは、すべて自分の手と頭で切り開くほかない。

「日本にはタワマンの欠陥を暴き、補償を経て、修繕工事をする、そんな事例はほとんどありません。お手本になるパイオニアがいない以上、自分で考えてやっていくしかないんです。正直、はじめたときはこんなに労力と時間がかかるとは思ってもみませんでした」。

何はともあれ、本当に欠陥があるかどうか、その事実を突き止めないうちは始まらないと感じた工藤さんは、所有者である住人たちから調査の承諾を得るため奔走することになる。

「理事会を開いてみると同じように不具合を感じている人がいることがわかりました。電子レンジのチンする音が廊下まで聞こえるなんていう声もありましたね。原因を探るには、もはや調査しかないと感じました。しかし、ここで壁になるのが住民の合意形成です。

管理組合負担で調査するとなると理事会と総会での承認が必須です。理事長の一存では決められません。ですから、まず調査をするために定期的に説明会を開催しました。夫婦で個別に面談をしたことも1度や2度ではありません。もちろんこれらは、すべて自前で行ったもの。

僕自身、いち所有者なので本来、住人のみなさんとは同じ立場です。しかし、そういっていては話がすすまないのでとにかく、住民のみなさんにわかっていただけるよう、丁寧に対応に当たりましたね」。

工藤さんが理事長になっておよそ1年。臨時総会で調査の議案が可決される。

「おそらく、ですが、調査費用が1部屋2万円程度とさほど高額でなかったことがよかったのでしょう。結局、調査は岩山さんにお願いをすることとなりました」。

岩山氏が率いる日本建築検査研究所が本格的な調査に乗り出す。

「予想通りといいますか、数々の欠陥が浮かび上がりました。岩山さんにお願いをしてよかったと心から思いましたね。表面的ではなく、一体何が不具合の原因なのかをしっかりと調査していただきました」。

岩山氏はこう話す。

「不幸中の幸いだったのが、建物の根幹部分に欠陥がなかったこと。そもそもですが、住む前にマンションの欠陥を見つけるのは至難の技です。大切なことは不具合があったときに、どのように調査するかということ。不具合の原因がどこにあるかを徹底的に調べないことには、改修も何もできませんからね。もちろん、ここでもとことん調査をしました。調査報告がまとまったのが、2020年11月頃でしたね」。

この調査結果で、今まで興味を持っていなかった住民たちの目の色が変わる。

「これまでは私が1人で騒ぎ立てている、そう思っている住人も少なくなかったじゃないですかね。それが報告書で一変しました。危機意識や怒り、そういうものがやっと住人からも伝わってくるようになっていったんです」。

工藤さんはここからが本番だという予感があったという。

「欠陥の理由がわかったわけですから、なんとしてでも認めてもらい、修繕工事をしてもらわなくては!という思いでした。もちろん大きな壁となるのはディベロッパーとゼネコンだとこのときはそう疑いもしていませんでした…」。

後編】では工藤さんが直面した第一の壁、そして現れる第二の壁についてさらに詳しく話を聞いていく。

取材・文/滝沢 悠



RANKING

1
2
3
4
5
1
2
3
4
5