頭がガンガンとひびき、うっすら気持ちが悪い。そして、ふとスマホに目を落とした。
ー3月22日(火)10:38ー
「あれ? 平日……!?」
謙也は飛び起きた。今日は平日。大寝坊である。最初に思い浮かんだのは、妻の顔だ。なぜ起こしてくれなかったのか。謙也は怒りをあらわにしながら、リビングへと階段を駆け降りた。妻はキッチンでコーヒーを淹れていた。
「もう怒りで震えていましたね。なんで起こしてくれないんだと。怒鳴りつけましたよ」
妻は平然とした顔でこちらを一瞥して何もなかったようにダイニングを出て、自室の仕事部屋に入っていった。謙也の苛立ちはマックス。リビングの椅子を蹴り倒し、大声で怒鳴り、最終的には家中のものに当たり散らしながら、仕事へと向かった。
「本当にムカつきましたね。一言、ごめんとでも言ってくれればいいのに。どういう神経なのか、わかりません。その日は1日イラつきすぎて仕事になりませんでしたね。社員にも当たり散らしてしまいましたよ」
謙也は朝の顛末を妻に問い詰めるべく、その日はどこにも立ち寄らずに帰宅した。しかし、家は静かでいつもなら夕食の準備で忙しく動いている換気扇の音も料理の香りもしない。リビングのドアを開けるとついているのは、ダイニングの電気だけ。
奥に腰掛けた妻がこちらに目を向けた。謙也は朝の失態に続き、今、食事を作っていないことをなじった。何も言わない妻に怒りがどんどん増し、暴言はエスカレートしていった。
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