「年齢は23歳で1浪して大学に入ったと言っていました。シングルマザーの家庭で家計が苦しく、大学には奨学金で通っているそうなんです。どこか田舎っぽさ残るというか、純朴そうなところに惹かれました。毎週通って、お金をつぎ込んでいますね。最近では同伴もしてくれるようになったので、食事をする機会も増えて嬉しかったんですが、就職活動が始まるらしくキャバクラを辞めるらしいんです」
謙也にとってふみは、毎日の活力になっていた。
「ふみは父親を知らないんです。だから僕のことをパパなんて呼ぶこともあるくらいで、すごく懐いていてくれているんです。僕も娘がいないもんで、頼られることが嬉しくて嬉しくて。いわゆるキャバクラトークだけじゃなくて、もう少し深い話もするようになりました。僕の方は下心、もちろんあります。わかっていますよ、そんな若い子が僕に興味がないことぐらい。でも少し期待しちゃいますよね」
妻は気にしないと謙也はいうが、実情は異なる。謙也と妻はこれまでもキャバクラ、風俗街通いで幾度となく揉めてきた。謙也は特に1人に女の子に入れ込むクセがあり、見境なくお金を使い、あわよくば! と迫っていく。実際、何度も関係を持ったことがある。
「ここだけの話ですが、俺結構モテるんですよね。だから、何度か浮気したことがあります。なんでだか妻にはすぐバレるんですけどね。僕にとって浮気はカラダの関係、不倫は心の関係、そう考えると今までは、断然前者でした。妻には申し訳ない気持ちがないわけではありませんが、しょうがないだろというか、それくらい多めに見てくれよという気持ちはありますね」
女性側からすればとんでもない理論である。しかし、ふみに対しては今まで浮気をしてきた女性とは違う特別な感情を抱いているそうだ。
「僕にとって浮気はカラダの関係、不倫は心の関係。しょうがないだろというか、カラダの関係くらい多めに見てくれよという気持ちはありますね」
「ただ今回のふみに関しては後者なんですよ。むしろカラダの関係はなくてもいいから、どうにか支えてあげたい、そんな風に思わせる子なんです。就職活動が本格的になったら、仕事ができず、生活が苦しくなるんじゃないかなと心配しています。まめに連絡を入れるようにしたいなと思っています」
謙也はこんな風に自由奔放に生きてきた。ただ、自分一人の力でここまできたわけではない。仕事も今でこそ順調だが、スタートは散々。喧嘩をして辞めてきたり、取引先で問題を起こしたり……トラブルは日常茶飯事。
その時代からずっと支えてきたのが、今の妻だ。トラブルを起こす夫に代わり、周りに頭を下げ、経理や総務、雑務もこなしながら、息子2人を育て上げた。まさに妻の鏡のような存在である。しかし、謙也はそのことに微塵も気がついていない。
「もともとは綺麗な人だったけど、子どもが生まれてどんどん老け込んで、今じゃ見る影もない。もう少し気を使って綺麗でいてくれたら、俺だって浮気とかしなかったかもしれないと思ったりしますよ」
正真正銘、糟糠の妻をここまで貶めることができるのは、育った環境のせいだろうか。それとも昭和という時代の影響だろうか。