「私は数回警察などに呼び出されて母を引き取りに行きました。警察は自宅の電話番号もわかっているのでそっちに電話してくれと頼みましたが、誰も電話に出ないと言うんです」
雪彦さんは会社に事情を話し、数度仕事を中断して母を迎えに行った。
「警官は毎回ご丁寧に服装や特徴などをちゃんとメモして、私にもヒアリングをします。迷惑をかけた方々にペコペコしたりお礼を準備したり...正直大変です。時間に余裕のある妻が、なんで行かないのかなと腹が立ちましてね」
夜9時を過ぎて雪彦さんが帰宅した時に、母がいなくなっていたこともある。入浴中の妻にドア越しに尋ねると、靴があるかどうか見てと言われ、見てみるとなくなっていた。娘もまだ不在だった。
まだ遠くまで行っていないだろうと探し回ったが見つからず警察に通報したところ、保護した母と特徴が合致する登録者を探している最中だった。取り付けておいたはずの氏名・住所カードは携帯していなかったそうだ。
「つけておいたはずなのに、その札がなくなっていたんです。妻は取れちゃったのかしらと言うだけでした。今思うと、妻が外して外出させたのかもしれませんね」
そこへ来て「お母さんは、わざとおばあちゃんを外に出しているのでは?」という娘からの密告だ。雪彦さんは妻が何を考えているのかわからなかった。
「頭を整理したくて、後日妻に内緒で娘と外で会いました。おばあちゃんのことを一番大事にしてるのはお母さんだよな?と恐る恐る訊ねると、娘は呆れたような顔をしました」
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