「そのとき、泣き出してしまったんです、彼が。男性社員に言われた通り、自分にはまだまだ力量がなくて、不甲斐ないと肩を震わせていました。不謹慎ですけど、その涙が私にはすごく美しく見えたんです。少しの間見惚れてしまうくらいでした」
でも、大の男が泣いたことでその場の雰囲気がちょっとギクシャクしたのも事実。この展開をどうやって、収束させようかと考えていると……
彼はすくっと立ち上がり、大きな声ですみません!と謝り、飲み直しましょう!と明るく振る舞った。
「その姿も愛おしく見えました。ああ、やっぱりこの子は伸びるなと。彼は自分がなくしてしまった純粋さみたいなものを持っているんです」
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