「父の日はいらない」発言があった日の夜、ますみさんは娘の部屋のドアをノックした。
「あなたの言葉を聞いた時のパパの気持ちを考えたか、と訊ねると、娘は黙り込んでいました。
すかさず『そんなこと、言われなくてもわかってると思うけど』と付け足しました」
ますみさんは娘に対し、「パパだってただの人間で、親だから強いわけじゃない」というメッセージだけは伝えたいと考えていた。
「あまり色々言わない方がいいだろうなと思いました。娘はただ押し黙っていたのでこれといった手応えはなかったですが、言いたいことは伝わったと信じました。
娘相手にほぼ駆け引きですよね。これでもし明日から私への態度も硬化させたとしても、またその時軌道修正すればいいと思いました」
リビングに戻ると、夫は頑張って笑ったり喋ったりしていたが、そこは長い付き合いだ。
ますみさんにはその空元気ぶりが手に取るように伝わってきた。
「夫は、『遅かれ早かれ思春期や反抗期は来るんだろうけど』と言いつつ、実はうちの娘はそういうのはないかもって思っていたそうです。
今は、仕事中も急にやる気がなくなるほどしんどいことがあると言っていました。そんなにつらいものなんですね」
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