最近の成績表をご覧になったことがあるだろうか。高校生とも全く縁のない方にも是非、一度検索などをかけてごらんになってほしい。
かつてのような「5・4・3・2・1」という評価の下に「BAB」や「BBC」「AAB」といった謎のアルファベットが書かれている。
これは何の暗号なのかと首をひねる保護者の方も多いそうだが、このアルファベット評価は、大学入試の際、大いに選考にかかわってくる。
ちなみにこの三つの評価は、左から順番に「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的な学習への態度」を評価したもの。一番上がA、一番下がCだ。
そして、かつては試験の成績のみで5段階の評価をつけていたが、今はその5段階の評価に、下についけられたABC評価も影響を与えてくるし、大学入試の際に、その部分を「高校の時の内申」として使う生徒が多いのだ。
このABCの評価を観点別評価と呼ぶのだが、現場では「なぜこんな評価をしなければならないのか」という悲鳴が上がっている。ただ、小中学校では2022年よりもずっと前からこの観点別評価を取り入れており、もはや定着しつつあるのだ。
「でも高校だけは義務教育ではないし、試験の点数で成績をつける形で何も問題はないと思っていました」
そう話すのは高校で数学を教えている理恵子さん(仮名)44歳だ。
文部科学省は、高校にも観点別評価を課す理由として、「これまでの学習評価体制では、学校や教員の状況によって学期末や学年末などの事後での評価に終始してしまうことが多く、評価の結果が児童生徒の具体的な学習改善につながっていない」
ということをあげている。
教育現場と文部科学省の認識のズレといったようなことは、頻繁に問題になっているが、この「観点別評価」もまた、そのズレにあたるのだろうか。
「人による……というのはどんなことにも言えてしまう言い訳になりますけど、観点別評価によって救われる子もいれば、やる気をなくしてしまう子もいます。それに、観点別評価になったからと言って、評価の結果が児童生徒の学習改善につながっているかどうかも児童に寄るので、結局は考査の点数で成績をつけていたころと何も変わらないのではないでしょうか……。
それに、扱う教員側もまだ扱い方がわかっていないので、観点別評価によってよい結果を導き出せたというような話を聞いたことがありません」
どうやら導入されたばかりの観点別評価によって、迷いや悩みが増えた教員はかなり多いようなのである。