「暗雲が立ち込め始めたのは、秋の学芸会が終わって行事が一段落したときです。来年度のことを決めなければいけませんでした。例えば、運動会はコロナ前のように1日がかりでやるのか、それともやっぱり半日だけ行うのか、とか。PTA役員も兼任している担当教員も交えて話し合いました」
学校側からの提案もあり、運動会は来年度も半日開催とすることがすぐに決まったそうだ。
一方、話し合いを最も長引かせた議題は、伝統行事ともいえる「バザー」存続の是非についてだった。
「このバザーがとにかく大変というのは昔から聞いていたんです。役員の中に経験者がいらして。その方の話を聞いたものですからみんな戦々恐々となって、復活させるべきなのか、3年間もやめていたんだからこの際廃止してしまうべきなのか、なかなか決まりませんでした」
痺れを切らしたのは学校側だった。
「物の大切さを子どもに教えられる、バザーの売上は貴重な財源となる、学区内の皆さんに楽しんでいただき地域を活性化できる」などを理由に、”開催しても良いのではないか”との提案が出されたそうだ。
PTA役員たちはそれぞれ腕組みをして考えていたが、その鶴の一声により、一瞬結論は学校側の要望に引っ張られそうになった。
「でもその後、役員経験がある方や地域の役員をやっている方から、バザーの問題点をぽつりぽつりと指摘する声が出始めたんです。その話の内容がひどくて、聞いているうちに、『いや待てよ。本当に開催して大丈夫?』という話になっていったんです」
バザーは保護者や地域住民に「商品」となる物品を提供してもらう作業から始まる。まずこの時点でいろいろな問題があるのだという。
「不用品回収業者が来ると勘違いでもしているのか、単純に常識がないのか、ほとんどゴミのようなものを提供してくる人もいるというんです」
利恵子さんは苦虫を噛み潰したような顔でそう語った。
後編では利恵子さんの経験談をもとに、バザーの困った実態について詳報していく。
取材/文 中小林 亜紀