「とはいえ、このまま夫を捨てるわけにもいかず。ひとまず、暮らしを立て直すためにさまざまなことをしました。自治体に相談して、デイケアサービスを頼んだり、介護保険の手続きとか……本当に面倒で時間がかかることばかりで、自分の仕事も有給や半休を使わなきゃならなくてすごいストレスでした。
なにより、夫を一人で置いていけないことが本当に大変で。でも火を消し忘れるとか、鍵をかけずに徘徊するとか日常茶飯事で、どうやったって、一人では置いていけない状態。私だけではどうにもならず、老年の義母にきてもらう回数も増えていました。先々の不安と毎日のイライラ……気が滅入る日も多かったです」。
それでも容子はなんとか、夫との暮らしを維持するための努力を重ねた。その血の滲むような努力が裏切られることになろうとは知りもせず……。
「本当に今思うと馬鹿らしくて、馬鹿らしくて。時間を返してもらいたい、そんな気持ちです」。
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