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HEALTH 「超名医に聞け!」

80歳の残歯率は、アメリカの半分。いつの間にか、日本は歯医者さんの「超後進国」になっていた。

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やっとマスクを外せる日常が戻りつつあります。そんななか、「最後に歯科治療を受けた日を思い出せない」という方は、想像以上に大きな健康リスクを抱え込んでいるかもしれません。

「残念ながら、現在の日本はれっきとした『歯科医療後進国』です。80歳時点で何本歯が残っているかを調査した国際的なデータがあります。スウェーデンは20本。アメリカは17本。イギリスが15本。そして日本は、わずか8本です。諸外国と比べて惨憺な状況と言わざるを得ません。男女の平均寿命では全世界トップクラスでありながら、歯はズタボロの状況。逆に言えば、この数字を上げれば、平均寿命や健康寿命もさらに上げられるのです」

こう警鐘を鳴らすのは、多くのセレブや政財界人がお忍びで通う歯科医院「紀尾井町プラザクリニック歯科・美容外科」院長の根深研一氏です。今回の「名医に聞け!」では、お口の健康に対して「平和ボケ」している日本の危機について、お話を伺いました。

「日本人は、デンタルケアに関する意識関心が低すぎる。80歳の残歯率はその表れですが、ある雑誌が行なった60歳以上のビジネスマンに対するアンケートで、興味深いものがありました。「40代のうちにメンテナンスしておくべきだった体の部位」の第一位が「歯」だったんです。多くの方が歯を失って、初めてその大切さを痛感している。しかし、一度失った永久歯は、文字通り永久に生えてはこないんです。当たり前に思われているこのことを、いま一度考え直していただきたいと思っています」

——ひとくちに「歯の健康」と言っても、歯や歯茎、口内細菌など、多くの要素が絡み合っていますね。

「その通りです。さらに、デンタルケアも含めたオーラルケアは、全身の健康と密接に関わっています。もともと、人体は、ひとつひとつのパーツが全体を作っており、パーツ単体で独立するようにはできていません。どこかが悪くなれば、必ずその影響は他の臓器に出てきます。


©︎gettyimages

例えば、お口の中の細菌が、認知症の原因になることが最近の研究でわかってきています。歯周病菌のひとつである、Pg菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)は、認知症の原因となるベータアミロイドとの関わりが指摘されています。最近では認知症の医師から、患者さんの「Pg菌」の除菌をオーダーされることもあるほど、連携的な治療が進んできました。

その他にも、口の中の細菌が気道から肺に入り、肺炎を起こす「誤嚥性肺炎」は、最新のデータによると日本人の死因の第6位まで上がってきました。歯を失うことで噛む力が弱くなったり、唾液の分泌が減ってきたりすると、口の中の善玉菌の割合が減って、悪玉菌が増え、特に要介護高齢者では、飲み込む力が弱くなるためさらに誤嚥性肺炎のリスクが増えます。脳梗塞や心筋梗塞の患部から、口内細菌由来の炎症性物質が見つかることもあり、お口の健康が命全体を左右するといっても過言ではありません。女性では早産や低体重児出産などのリスクも報告されています」

——口臭も、口の中の細菌の仕業なのでしょうか?


©︎gettyimages

「はい。お口の中には500~700種類の細菌が存在していると言われています。これらの菌は、「生きるために必要な善玉菌」と「虫歯や歯周病などの病源となる悪玉菌」に分けられ、これらがバランスを保ちながら外来細菌やウィルスの感染、定着、増殖を阻止しています。

細菌の治療をする前の口内(左)と、治療後

口内のお掃除不足や、免疫力の低下などでこれらの細菌のバランスが崩れた時に、歯周病・虫歯・口臭が発生するのです。つまりお口の健康を維持するためには、これらの口腔内細菌のバランスが非常に大切なのです。ちなみに、口臭は口の中の細菌原因が9割、胃などの他臓器からの原因が1割と言われています」



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