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HEALTH 「超名医に聞け!」

【FORZA世代は要注意】親が認知症になっても幸せに暮らす方法

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趣味を持つ、炭水化物を控える。名医の予防法とは?

「昨日の晩ごはん、何だっけ?」、「取引先の担当者の顔は思い浮かぶが、名前が出てこない」——、最近もの忘れが激しくなった、そこのダンナ。なかには肉親が認知症になり、自分も将来そうなるのではないか、と不安を抱いている方もいるかもしれません。

「認知症になったら何もわからなくなり、人生が終わる」「暴れまわって迷惑をかけないか」など認知症を「もっとも罹りたくない病気」だと思っていませんか。

都内や千葉、埼玉を中心に2つの病院、8つの特別養護老人ホーム、2つの介護老人保健施設、25箇所のクリックなどを展開する桐和会グループの岡本和久理事長が認知症の最新情報、巷の誤った情報に現場から答えます。

――人の名前が出ないなど物忘れが激しくなってきたのですが……。

年を取れば誰にでももの忘れは起こります。ヒントをもらって答えられれば心配ありません。認知症は、短期記憶、意欲、集中力が保持できなくなることが始まりで、それらを中核症状と呼ぶ。進行度合が深まると興奮して暴れたり、夜中徘徊などのBPSD(行動・心理症状)が現れます。巷で「認知症への恐怖」として、このBPSDのイメージが強く、認知症と診断されると、「人生が終わった」「すべてを忘れてしまう」と間違った情報に振り回されてしまう。しかし、認知症の人にも感情や自尊心は残っています。聞いていないようでも負の感情で対応すると相手にも伝わります」

――アイデンティティーを傷つけてはいけないわけですね。

「初期の段階では、本当に認知症なの? と感じるほど元気な方も少なくない。症状は千差万別ですが、周囲の丁寧なサポートがあれば独り暮らしも可能です。散歩にしても、川沿いをまっすぐ行って、また戻ってくるなど工夫をすることで続けられる。ビジネスの一線で働いてた人ほど認知症と診断されると「認知症イコール人生の終わり」と判断し、家に閉じこもると進行が進んでしまいがちです」

――周囲のサポートとは?

「まずは話を聞いてあげる。3,4歳の子どもと一緒で手をかければかけるほどいい。赤ん坊は愛情を注いで育てれば情緒も安定した子どもへと育つ。これと考えは一緒で、まずは話を聞いてあげる。面倒で、テレビをずっと見せておく、部屋のカギをかけて外出させない、とすると寝たきりになってしまう確率が上がります。不安を取り除いてあげることが第一です」

ーー共働きで時間が取れない人も少なくないでしょう。


@getty images

「親が認知症とわかると「治す薬をください」と話すのですが、いま現在、アルツハイマー型認知症の患者に処方されるのは症状を遅らせる薬です。認知症そのものを治す特効薬はまだ開発されていません。私は家族の方に「認知症の対策で薬は100のうち15程度、残り85は家族のサポート」と話します。徘徊してしまうのも、横で一緒に歩いてあげれば、散歩になる。もちろん、そんな時間はない、という人も多いでしょう。妻に親の介護を任せる、という時代でもない。ケアマネージャーに相談してみてください」

ーー親のどういう兆候に気を配るべきですか。


@getty images

料理をつくらない。部屋が汚い。服装がチグハグ。お風呂に入らない。時計が読めない。どこになにを置いたのか覚えていない、などはシグナルですから、認知症のスコアリングテストを受けたり、MRIで脳の診断を行ったほうがいい。もの忘れ外来や神経内科、老人科で診断してもらえる。BPSDまで進行していたら、各都道府県には医療圏(医療機関の整備を進める際の地域割り)ごとに認知症疾患センターがあるので、そちらでも対応してくれる。東京都は予算が潤沢なために23区内すべてに認知症疾患センターがあります。認知症疾患センターとご自宅の住所で検索すれば最寄りのセンター出てきます」

ーー最近は認知症の人がカミングアウトをして本を出したり講演をされています。一人で旅行したり、簡単な作業をして賃金を得る人など元気な方が多い。

「認知症だから何もさせない、は間違っている。むしろ反対にやれそうな作業を手伝ってもらう。認知症の人に限らず人は役割があると生き生きとします。うちのグループホームは給食業者を入れずに認知症の人も交えてスタッフと一緒に買い物から調理まで行う。料理が苦手な男性は買い物や食器を並べたり、後片付けで頑張ってもらう」

ーーグループホームは共同生活ですから、独り暮らしよりも刺激がある?


@getty images

「皆で役割分担し、刺激し合うことで、健康な時間が伸びていく。給食センターを入れて、スプーンで食べさせてしまえばこちらは楽なんです。デイサービスでもちょっと血圧や体温が高いとお風呂にいれない施設は少なくない。お風呂を楽しみにしていたのかもしれない。ちょっと血圧や体温が高いくらいで何もさせない。安全のため、といいますが、作業を減らしたい、と勘ぐりたくなる。やらない言い訳を探せばいくらでも出ますから。自分で歩ける高齢者を車椅子に乗せてしまう、そんな施設は未だに少なくない。その人の尊厳よりも働く側の効率で考えているからです。

5メートル歩ければ自力でトイレにも行ける。私たちは「おむつゼロ」を提唱しています。特別養護老人ホームでも「おむつゼロ」、「下剤ゼロ」にして、自分の足でギリギリまでトイレに行ってもらう。おむつをさせちゃえば介護側は楽なのですが、自分に置き換えればわかるのですが、おむつをされるのは嫌でしょう。それなのに日本中のほとんど施設ではおむつを履かせている。周囲の方が少し手間をかければ認知症の人の尊厳も守られるのに」

ーー楽しそうなグループホームですね。

「制限はありますが、うちの施設では、タバコも吸えるし、お酒も飲んでいい。職員から、タバコの吸殻がポケットから見つかって失火の可能性もあるので、止めさせました、と報告が入った時、「ずっと吸ってきた人はたまには吸いたいと思うよ。お酒だって私は飲めないからわからないけど、楽しい気分になれるんだからたまにはいいじゃない」と返した。他所では持ち込みの食べ物を禁止している施設もあるのですが、うちは自由です。チョコレートばかり食べたら健康上よくないけど、1枚2枚食べる分にはかまわないでしょ」

――おおらかですね。

「20年前はグループホームを建設しようとすると住民から反対運動を受けた地域もありました。いまは社会が受け入れる。キーワードはお互い様です。特殊な病気ではないですし、誰でも老人になる。いずれ自分も認知症になるかもしれない。そう受け入れ、支え合う。認知症に寛容な社会になれば、怪我した人や障害者、高齢者にも優しい社会になります


@getty images

――40歳からの予防はどうしたらいいですか。

「患者さんを観ていて、関節の可動域は重要ですね。自力で服を脱いだり着たり、トイレやお風呂に入るのも関節の可動域が狭まるとやりずらくなる。筋トレはちょっと、と思う人もいると思いますが、ストレッチなら抵抗も少ないでしょう。入浴後、身体が温まった状態でストレッチをしてみて下さい。

周りの医者から最近、糖質制限をしていることをよく耳にする。ご飯や麺の量を減らしたり、ビールなど炭水化物の摂取を控える医師は多いですね。実際にヘモグロビンA1Cの数値がよくなっている。私はやっていませんが、医師が実際にやっていますので、いいんじゃないでしょうか?

心の持ち方でありますが、いろんなチャンネルを持つことは大切。学校の先生や開業医は認知症が多い、と言われます。仕事が忙しく家と職場の往復になってしまいがちだから。趣味はたくさん持ったほうがいい。釣りでも将棋でも絵を描くでも何でもいい」

ーー蝶の標本が飾ってありますね。先生の趣味ですか?

「蝶の孵化や育成までやります。小学生の時から昆虫好きで、中学で生物部に入り、昆虫班で蝶を採っていた。大人になってからは、アポロウスバシロチョウを観察のためにアルプスの麓のペンションに泊まり、早朝から観察しました。モンゴルにも珍しい蝶がたくさん生息するので、ウランバートルから車で10時間ほど移動した場所でゲルで暮らしながら、観察しました。沖縄北部に生息するフタオチョウを引き寄せるためにパイナップルを泡盛に浸し、寄ってきたところを撮影しました」

ーー楽しそうです。気持ちが、小学生に戻っていますね。

「この趣味があるから仕事が続けられる。どこかのクリニックや病院で問題が起こりますし、経営者として黒字にしないといけない。日々ストレスとの戦いとも言えるので、趣味で童心に戻らならないと。昨年12月、青梅の山中に卵を採集しに行ったのですが、崖を登って、枝を寄せて探しているうちに肩を痛めた。まだ痛みが引きませんが、フィールドワークを行っていると気持ちを切り替えられる。チャンネルをたくさん持つことも認知症対策になる」

ーー今日のファッションについて。バックはエルメスのドゥブル サンスですね。

「妻が私の誕生日にプレゼントしてくれたもの。上からどんどんものが入れられて重宝している。時計は20年も使っているカルティエのパシャ。靴はクリスチャンルブタンで、ニューヨークのバーニーズで買いました。年4,5回、欧米やアジアのリハビリ施設や介護施設、病院の視察に行きます。その合間でバーニーズに寄ったりと」

ーー海外視察で得たことは

「アメリカのリハビリ施設では、毎日リハビリを行う。365日間、続けてリハビリを行う。日本では未だに土日休みになっているところもありますが、月から金まで積み上げたものが、土日休むことで後退してしまう。土日も続けることで早く治る。本やネットでも海外の最新情報はわかるのですが、どうしても書き手の取捨選択がある。やはり自分の目で現場を見ることで得られるものはありますね」

次回の「名医に聞け!」もお楽しみに。

Photo:Katsumi Murakami
Text:Daisuke Iwasaki

(プロフィール)
1964年、東京都生まれ(54歳)。開成高校、千葉大医学部出身。1993年、28歳の時、篠崎駅前クリニックを開院。土曜日曜日も外来患者を受け入れることで地域医療のサービスに変革をもたらした。理事長を務める桐和会グループは、特別養護老人ホームの他、クリニック、病院、病児保育など運営。従業員数は2700名。



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