翌日も英子は仕事だったため、夜までTwitterを開くことも通帳記帳に行くこともできなかった。終業後、スーパーの駐輪場で急いでTwitterを開いたが、あの男からのDMは来ていなかった。一方で今まで見たことのない表示がなされていた。
「メッセージリクエストというボックスができていて、10件以上の承認待ちとなっていたんです。そこをタップしてみるとなんだか得体の知れない人たちからのメッセージがずらり。副業募集やママ活募集、パートナー、ネットアルバイト……見慣れない文字が並んでいました。怖くなってすぐにその画面を閉じました。DMに戻りましたが、あの男からの返信はありませんでした」
英子は嫌な予感がした。しかし、まだこの時点では希望を捨ててはいなかった。急いで銀行に向かい、震える手で通帳を機械に入れ、通帳記帳のボタンを押した。
「通帳が出てくるのを待っている時間が、永遠に続いているような感覚でした」
機械から聞こえる記帳のジー、ジーという音が店内には鳴り響いていた。そしてついに通帳が出てきた。
「目をつぶって取り出し、そのまま閉じました。そして、ATMが並ぶ店内の端っこに行って、おそるおそる通帳を開きました。最後の一列にあったのは今月の電気料金の引き落とし。残高はお恥ずかしいですが、12908円。これだけです。40万円なんて振り込まれていませんでした」
もしかしたら、まだ振り込まれていないのかもと男に数回DMをしたが、返信が返ってくることはなかった。英子は来る日も来る日も、DMを待ち続けた。そして通帳記帳に通った。しかし、DMも40万円も英子の元にくることはなかった。2週間が経ち、英子はやっと自分が騙されていたことを受け入れたという。
「冷静な頭で考えれば、見知らぬ人がお金を配るなんてありえません。なぜこんなことを信じてしまったのか…。私の人生ってやっぱり、本当についていないというか、学習が足りないというか。1万円、皆さんにとっては大した額ではないかも知れませんが、私にとってはなけなしのお金です。どうして、こんなことに引っかかってしまったのか……情けないです」