高子は家に帰り、改めて息子に向き合った。今まで気がつかなかったが息子の目の前に座っているのにもかかわらず、2人はまるで目が合わない。息子は私を直視することもできないくらい、怯えていたのだ。
そして冒頭の状況である。高子はこの事態にすっかり打ちのめされてしまった。自分が正しいと思ってきた子育てが、息子をそして他人を傷つけていたことに気がつき、自信を喪失してしまったのだ。今は夫、子どもとともにカウンセリングに通っているという。
「周りがまるで見えなくなっていたことにも、過干渉であることにもまるで気がついていませんでした。初めての育児だったとはいえ、息子をここまで傷つけてしまった後悔が拭えません。息子はカウンセリングの甲斐もあり、とても元気になり、しっかりと目も合わせられるようになりました。この春小学生になります。私はというと相変わらず、鬱状態で通常の生活を送るのはもう少し先になりそうです」
高子は肩を落とした。自分の理想や思い込みを押し付けることの恐ろしさを改めて感じる一件である。
ライター:悠木律
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