「実際のお義母さんはもっとキツく聞こえる方言で話しますけど、要約すると、お尻触られたくらいで寄り合いのお手伝いをしないなんて……さすがは今どきの人ね、と言うんです。そんなものもかわせなくてどうするの?と……もう信じられないです。じゃあ、何を触られたら文句言っていいんでしょう」
これを機に、どんなに非難されても、寄り合いには出ないと決めた。しかし、そのほかの町内行事でも頻繁に招集がかかるので、近所の面々と顔を合わせないわけにはいかなかった。
麗香は行事のたびにアウェイな気分になり、できるだけ感情を殺して過ごしてきたという。
中には、「町内会はみんなで助け合わないといけないのに」とか、「あなたの家で何か起きても誰も助けてくれなくなる」などと直接文句や脅しを言ってくる人もいたのだそうだ。
「夫は知らん顔してます。ほっとけよ、そのうち年寄りが死ねば、ばかみたいな伝統もなくなるだろ、と言うんです。私、たとえ時間が解決したとしても、もうそんなのどうでも良くなってます。
夫そのものにも失望してるんですね。予定では、今年は子どもを授かりたい年だったんですが、子どもができたら別れづらくなるし、子どもが可哀そうなので、絶対できないようにしてます」
麗香は実家の母親に、多分もうもたない、と告げてあるのだという。
もうまもなく移住して1年。麗香はそろそろ潮時だと考えている。どこで生きても快適ばかりではないが、耐えるに値する苦労と無駄な苦労の見極めは大切かもしれない。
ライター:中小林亜紀
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