【あらすじ】
都会暮らしにうんざりし、夫の故郷にUターン移住した麗香。田舎ならではの習わしに慣れないなか、麗香は義父について驚きの事実を知る。
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「場内バカ受けでした。舅は『ピチピチだなあ、いいだろう?』と辺りを見回しながらまた大笑いして、今度は私の肩に手を回してきたんです。
私は我慢できずにその腕を振りほどいて、もう帰りますと言って部屋を出ていきました」
背中越しに何人かの男が「洗い物だけしていってくれよ」と声をかけたのだが、麗香はそのまま帰るつもりでいた。
しかし、散らかしたままで帰れば、後で町内の「小姑」たちに後ろ指を差されるかもしれないと不安になり、洗い物だけは済ませて帰ることにした。
「調理場に溜まってたグラスとかお皿だけ急いで洗って帰ろうと思って、片付けを始めました。畳の部屋からはカラオケや大声が聞こえてきて、とってもうるさかったですね」
もの凄いスピードで皿洗いを済ませた麗香がタオルで手を拭きながら振り返ると、彼女の真後ろ3mほどの所に置かれたスツールに、いつのまにか高齢の男が1人にやにやしながら座っていたという。天井の太い梁に据え付けられた蛍光灯が明滅し、男のにやけ顔を妖しく照らしていた。
「蛍光灯のチカチカがまた不気味で……。音もなく調理場に来て、座って私の後ろ姿を見ていたようなんです。その酔っ払ったジジイと目が合って、びくっとなりました。しかも、そのジジイ、にんまりと笑うと自分の股間を指差し、そのあと、手を筒みたいな形にして上下に動かすような仕草をして見せたんです」
本当にいいケツだなあ、もうちょっとお台所しててくれよ、と声をかけてきたのだという。麗香は血相を変えて公民館を後にした。
ろくに街灯もない田舎道を、場違いなほどスタイリッシュな外観をした自宅まで小走りで帰った。あまりの気持ち悪さに、心臓がバクバクしていたという。