ひととおり妻の話が終わると、夫は突然、感情を爆発させるかのように泣きだし、嗚咽しながら頭をつくようにして土下座をはじめた。
そして祐子さんに対し、自分が犯してしまった取り返しのつかない、大きな過ちを詫びるのだった。SHIGEMIという相手の女性は、あろうことか会社の部下だという。
祐子さんは、そんな夫の姿をみて滑稽だと思った。そして、言葉に言い表せないような軽蔑と憎しみと「一生、コイツを苦しめてやりたい……」というサディスティックな思いで、徐々に心が支配されていくのを感じた。
祐子さんは夫に対して、ただ冷酷に言い放った。
「定年が近いので、あなたとは離婚しません」
「相手が暴露をしようが子どもを堕ろそうが、私には一切関係が無いことですから」
夫は床に平伏したまま、妻からの死刑宣告にただ、耳を傾けている。
「年金のこともあるので、このまま一生、家族に対して償ってもらいます。」
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