母親の顔には笑顔も涙も、怒りの表情さえない……“無”でした。
少し離れた場所から、二人のやり取りを娘と見聞きしていた夫が驚くのを横目に、母親はリエさんの過去のこと、態度のまずさや自分への対応を一方的に攻め立てたのです……。
「どのくらいの時間だったのでしょうか……。娘が泣き始め、私たちは、母の家を後にしたんです。『お母さんのことが大好きだ』。それは、私の嘘偽らざる気持ちでした。その気持ちを理解してほしい一心でした。でもそれが難しいことに改めて気付かされました」
©Getty Images
「一時期、私自身精神的に参ってしまい、カウンセリングに通いましたが、先生に言われたのは、母の状態は心を巣食う生い立ちからくるトラウマが作用し、母自身もコントロールができないのだと。私がいくらわめいても、責めても、意見を乞うても、母は変わらないのです。この日それがはっきりと分かった気がします。母の気持ちを変えようとすればするほど、母を自己防御に走らせるだけなのです。時間がかかるかもしれないけど、自分が変わること。これこそが、私がすべきことなのだとはっきりと分かったのです」
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