遥は全身の神経が逆撫でされたと同時に火をつけられたような、これまで感じたことのない感覚に襲われる。
「なにこれ? どういうこと? 何でそんなレシートが?」
頭の中の混乱はどんどん膨れ上がっていく。
その時にふと思い出したのが、「番号札のついたあの鍵」だった。もしかしてあの鍵のロッカーに買ったものを隠してあるの? だから私とはしないの?
巨大なハンマーで殴られたような衝撃を受けながら、遥はすべての点が線で繋がったような気がした。そして泣き崩れた。
数日間、遥は何も手につかず、常にぼんやりとしているような状態が続いた。暁彦を問い詰めることもできず、真相を聞く勇気もなかった。何も知らない夫は妻の体調を心配し、薬まで用意してくれた。
だが、きちんと聞かなければ前に進めない。
ある晩、遥は暁彦に打ち明けた。新宿駅で鈴木に会ったこと、そして最近は全く飲みに行っていないと言われたこと。ボストンバッグからレシートの破片を見つけてホームページを見たこと、そしてあのロッカーの鍵のこと。
「そっか。ついに知られちゃったか。いつかはこんな日が来ると思っていたけど……」
暁彦は取り乱すこともなく、静かに話し始めた。
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