輝美は動揺したが、孤独と精神的に追い込まれている洋平を拒むことができなかった。
子供っぽい夫、さらに二人の子育てや仕事に必死で、女を意識したことなどここ数年なかった輝美。生徒からの好きは感謝や敬愛の言葉なはずなのに、洋平のこの言葉は輝美を女へと変えてしまった。
そして二人の関係は、その後も続いていくことになる。
あれから10年。輝美は高校教師を退職し、現在は塾の講師をしている。娘はIT系企業に就職。息子は歌手になりたいとYouTubeでパフォーマンスを始めデビューするチャンスを狙っている。
洋平は、数年付き合った彼女とデキ婚をして女の子が生まれた。しかし、妻は性格が合わないと、他に男を作って出ていき１年足らずで離婚。洋平が一人で子育てをすることに。
©Getty Images結婚当初は洋平の幸せを願い、ほとんど会うことはしなかった輝美。しかし離婚したことを聞き、洋平の子供を一緒に育ててもいい、と考えている。もう50歳を過ぎたが、そんな年齢でも許されるのであれば……。
夫や子供たちには、洋平と男女の関係であることなど話していない。なにかと心配な、放っておけない元生徒の一人だと伝えている。もし本当のことが輝美の家族に知られたなら、夫も子供たちも自分から去っていくことは間違いない。
それでも洋平のことが放っておけない。
教え子だった時代から今日まで、罪の意識はあれど離れることができない二人。元教師と元教え子に、未来はあるのだろうか。
Text：女の事件簿調査チーム
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