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洋平の自宅のリビング、そこはまるで強盗が入ったかのように散乱していた。
「どうしたの? 泥棒でも入った? 警察には電話したの?」
「いや……」
洋平は首を横に振りながらゆっくりと今の自分の状況を話し始めた。
父が不倫をしていて突然相手の女の人が訪ねてきたこと。その場で母と大喧嘩をして父が出ていったこと。母は半狂乱になって部屋をめちゃくちゃにしたこと。そして自殺未遂をして今は病院にいること。
輝美は言葉を失った。学校に行く気にはなれず、どう報告していいかもわからないので、病気だと連絡していたらしい。洋平の目から涙が溢れていた。
「俺、どうしたらいいかわからなくて……」
「大丈夫、大丈夫だから。少しずつ考えよう」
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気づいたら輝美は泣きながら洋平を抱きしめていた。
学校へある程度の状況報告はしたが、親の問題にあまり介入しないのが学校側の常。担任は子供への影響がある場合にのみ対応する。
母親が病院から戻って洋平が通学を再開すると、学校も担任も、静観するのみとなっていった。
洋平の母は飲食店を経営しているので、夕食は洋平一人で食べることが多かった。母がまた自傷しないか心配している洋平が気がかりでもあったので、放課後に時折、輝美が様子を見に行くようになった。輝美にも小学生と中学生の子供がいることもあり、寂しそうな洋平を放って置けなかったのだ。
そんなある日、夕食を一緒に食べた後に洋平と話をしていると、突然
「俺のことこんなに心配してくれる人他にいないよ。マジで輝美先生好きだ……」
と言って輝美をソファに押し倒してきた。
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