「もちろん、先方が嘘をついている可能性もないわけではない。でも、私の胸中に芽生えた彼に対する不信感を払しょくすることが出来なくて、今度は部のメンバーに話してみたんです。『以前は生意気な物言いや、強引な仕事の進め方をしてしまってごめんなさい。まだ仕事に慣れずに、がむしゃらになりすぎていました。あの時は嫌な気持ちにさせてしまいましたよね』と……」
すると、再び驚くような事実が判明したのだ。
「坂本さんのがむしゃら期、確かにあったね! 部のメンバーで、すごく熱心で部内の士気を高めてくれるからいいね!って話していたんだよね。仕事の進め方も見習うべき点が多いって、井上さんと一緒によく話していたんだよ」と答えたのだ。
美幸は愕然とした。取引先の話と合わせて考えると、井上は自分がトラブルを解決したかのように装い、美幸の信頼を得ようとした可能性が高いからだ。
その目的は何だったのか? それは肉体関係。つまりカラダ目当てだったとしか思えない。
「自分がだまされ、もてあそばれていたと気づいて、はらわたが煮えくり返りました。そこで、『取引先からクレームがきたこと、部内で私に対する不満がなんていう話、そしてそのトラブルを解決したというのも、全部作り話だったんじゃないですか』と詰め寄ったんです。でも、彼は『向こうが嘘をついているんだろ』と笑うだけで、取り合ってくれませんでした」
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