【後編】女性の精神を支配し、不倫関係へ。「マニピュレーター」に嵌められた女の体験談。

部内や同僚からクレームが出ていたという自分を守ってくれた優しい上司、井上につい身体を許してしまった美幸。その後も井上との関係は続いていく。

会う度に井上が決まってささやく言葉、それは「いつでも僕が君を守ってあげるからね」だった。
 

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しかし、安直な嘘で固められた“親切”はちょっとしたことで、もろく崩れていくもの。

きっかけは、取引先に代理で書類を届けに行った時、偶然にも以前、美幸にクレームを申し立てた部長に出くわしたことだった。向こうも会いたくも話したくもないだろうとは思ったが、無視するわけにいかないと思った美幸。

「クレーム事件のこともあったので、まずは謝らなければと思い、深く頭を下げ、『数々の私の失礼な態度、本当に申し訳ありませんでした』と挨拶もそこそこに、謝罪しました」

しかし、取引先の部長から放たれた言葉は信じられないものだった。

「こちらこそだよ！ こちらが無理難題や急ぎ案件ばかりをお願いしていたせいで、体調を崩したそうだね。その後どう？ 体調は」

美幸には、一体何の話をしているのか分からなかった。しかし、井上から聞いていた話をすると、取引先の部長は怪訝そうな顔をしながら、「いやいや、こちらはクレームを上げたことなんてないよ！ 逆に、いつも一生懸命の坂本さんを褒めていたくらいだよ。井上さんおかしいね……」と驚いた様子だった。