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新型ノア/ヴォクシーから見るヴェルファイアとエスクァイア失墜の理由

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安全装備や自動運転でますます高額化している現代のクルマ。上手に購入する方法は? さらに、所有してからも様々なトラブルやアクシデントが起きるのがカーライフ。それら障害を難なくこなし、より楽しくお得にクルマと付き合う方法を自動車ジャーナリスト吉川賢一がお伝えします。

あの大人気ミドルサイズミニバン、トヨタ「ノア」、「ヴォクシー」に新型が登場、2022年1月13日より発売開始となっている。目標台数はノアが8100台/月、ヴォクシーが5400台/月。トヨタとしては、新型ヴォクシーを、あえて攻めたデザインへと大振りした分、真ん中を狙った新型ノアを販売主役としたい意向のようだが、某トヨタ系ディーラーの情報によると、注文の約半数はヴォクシーのようだ。

このノア/ヴォクシー兄弟には、先代まで「エスクァイア」というモデルもあった。新型ノア/ヴォクシーの魅力をご紹介するとともに、同社のLサイズミニバン「アルファード/ヴェルファイア」の現状や、消えていった末っ子「エスクァイア」廃盤の理由を考察し、「ミニバンの正解」に迫っていく。

 

■最強のモデルに仕上がった、新型ノア/ヴォクシー

4代目となる新型ノア/ヴォクシーでは、プラットフォームにカローラシリーズやプリウスにも使ってきた、TNGAプラットフォーム(GA-C)を採用。軽量でありながら高剛性化したボディとなったことで、上質な乗り心地が期待できる。

ボディサイズは全長とホイールベースは維持したまま、全幅を1730mm(先代型の標準仕様は1695mm、エアロ仕様は1735mm)とし、全高は先代比で70mmアップとなる1895mmに。フロア面の地上高も20mm上がってはいるが、車室内がより広くなった。また、ボディサイド面を立たせたことで、頭部の左右クリアランスも広がり、開放感が増している。特に2列目シート、そして3列目シートから見たときの視界が、より広くなった。

新型ノアのエアロモデル。4695×1730×1895(全長×全幅×全高)mm、ホイールベースは2850mm。5ナンバーサイズの標準仕様は廃止となり、全車3ナンバー化した

新型ノアは先代と同様、標準モデルとエアロモデルを用意。標準モデルは、フロントグリルがボディ同色となり、落ち着いた印象を受けるが、エアロモデルは、フロントバンパーからサイドのグリルまでが、メッキ化とブラックアウト化されたことで、アルファードのエアロモデルのようになった。新型ヴォクシーの、プレデターのような独創的なフロントマスクは、これまでのトヨタ車の中でも随一といっていい、攻め込んだデザインだ。

新型ヴォクシー。ボディサイズは新型ノアと同一。フロントバンパー、ヘッドライト、テールランプ、ホイールのデザインなどがノアと異なる。「あえてアグレッシブなフロントフェイスとしており、好き嫌いが大きく分かれるがそれこそが狙い」とのこと

先代では縦長だったテールランプは、新型ノアはL字型、新型ヴォクシーでは2本の水平ライン形状となった。ぱっと見、アルファードやヴェルファイアのように見えるのは、リアガラスの面積が広がったことが要因だ。リアスタイルからも、クルマがひと回りほど大きくなったように見え、明らかに迫力が増している。

新型ノアのリアデザイン。先代では縦長だったテールランプはL字型の形状となった

車内のユーティリティも、2列目のストレート超ロングスライドや、ユニバーサルステップ、フリーストップバックドア、3列目ワンタッチホールドシートなど、ユーザーの声を真摯に取り入れて正常進化している。軽い力で跳ね上げて、固定までできる3列目ワンタッチホールドシートの出来は、跳ね上げタイプの「最終形態」と言ってよいだろう。バックドア開閉のスイッチが、バックドア側からボディサイド側に移動しており、バックドアの開き具合を見ながら開閉できるというアイディアも秀逸だ。

新型ヴォクシーでは2本の水平ライン形状となった。リアガラスの面積が広がったことで、リアビューが一回り大きなミニバンに感じる

パワートレインは、ハリアーにも搭載している2.0Lガソリンと、燃費23.4km/Lをたたき出す新開発1.8Lハイブリッドそれぞれに、2WDと4WDを設定。先進装備も満載で、全車速追従型レーダークルーズコントロールやLTA(レーントレーシングアシスト)といった、先進支援技術は標準装備。さらに、緊急時操舵支援(アクティブ操舵)や、レーンチェンジアシスト(自動車専用道でウィンカー操作をきっかけに車線変更)、そしてアドバンスドドライブ(自動車専用道での渋滞時にハンズオフが可能)といった高額先進装備が、13万4000円(パッケージオプション)という破格の価格で用意されている。

 

■エスクァイア廃止の理由とは?

2014年に登場したエスクァイア。当時トヨタは、販売系列店ごとにミニバンをつくり分けており、ノアをカローラ店で、ヴォクシーをネッツ店で、そして、トヨタ店とトヨペット店でエスクァイアを販売していた。トヨタ店とトヨペット店といえば、トヨタディーラーのなかでも格が上。そのイメージにあわせて、エスクァイアは、ノアやヴォクシーよりも「上質かつ大人向け」に仕上げられており、価格も少し高い設定であった。また、エアロパーツなどが設定された「やんちゃ」なグレードは存在しなかった。

トヨタ店、トヨペット店では上級ラージミニバンのアルファードを販売していたこともあり、その弟分といった位置づけのエスクァイアは、どことなくアルファードに似たヘッドライトやフロントグリルなどのデザインが与えられていた。「アルファードじゃちょっと大きすぎて……」という顧客には、高級感がありかつ、ちょうどよいサイズ感のエスクァイアは「丁度よい」選択肢であったのだろう。エスクァイアは、2019年までは年間4~5万台ほど売れ続けていた。

高級志向のミドルサイズミニバン。アルファードの弟分的な位置づけで、ヘッドライトやフロントグリルなどは、アルファードに似たデザインが与えられていた

だが、2020年5月のトヨタ販売店の統合により、トヨタの販売店全店でトヨタ車すべてが買えるようになったことで、カローラ店やネッツ店の顧客も上級ミニバンを購入しやすくなった。そうした顧客達が狙ったのが、威風堂々とした佇まいの「アルファード」だ。

アルファードに顧客が流れるなか、高級感はあるが価格が高く、ミドルサイズミニバンユーザーが好む「派手さ」に欠けていたエスクァイアは存在意義をなくし、販売が低迷。2020年は2万6368台、2021年は、1万2482台にまで落ち込み、ついに2021年12月、生産終了となった。

 

■ヴェルファイアはなぜ失墜したのか

また、Lクラスミニバンの「アルファード」「ヴェルファイア」兄弟にも異変が起きている。法人顧客の多いトヨペット店の「アルファード」と、若者や女性をターゲットとしたネッツ店の「ヴェルファイア」として、アルファードは比較的落ち着いた、ヴェルファイアは艶やかで派手なフロントフェイスを与えられていた。なかでもヴェルファイアは狙い通り若者の支持を集め、2010年にはアルファードの販売台数が3万5754台だったのに対し、ヴェルファイアは6万1015台売り上げる、という人気ぶりだった。

2021年12月時点のヴェルファイアは、ガソリン車の「ゴールデンアイズII」(2.5L、2WD)と、ハイブリッド車の「ゴールデンアイズII」(2.5Lハイブリッド_4WD)のみのラインアップへとなっている

異変のはじまりは2018年のマイナーチェンジだ。アルファードが清潔感のある厳ついフェイスになった一方、ヴェルファイアはさらにギラギラ感が増したフェイスに。このヴェルファイアのフェイスは若干「やりすぎ」だったのだろう、以降ヴェルファイアは徐々に販売台数を減らしていく。

これに前述のトヨタの販売店統合が追い打ちをかけた。より人気車となったアルファードを、カローラ店、ネッツ店の顧客も変えるようになったことで、アルファードへの流れが加速したのだ。その結果、2021年のヴェルファイアの販売台数は6742台。全盛期の10分の1にまで激減してしまった。

2018年のマイナーチェンジでは、3.5リッター車に新開発の直噴エンジンと新開発のダイレクトシフト8ATを搭載、最上級グレードに「エグゼクティブラウンジ」を設定するなど大改良された

その一方でアルファードは年々販売台数を伸ばしており、2021年は9万5049台と、ベースモデルであっても350万以上する高額車でありながら、国産車登録車販売台数ランキングで4位にランクインしている。

 

■ミニバンは「顔」が命!!

ヴェルファイアは、2021年4月の商品改良で、300万円台で購入できるエントリーグレードを廃止し、2WDガソリン車の「ゴールデンアイズII」(424万円)と、4WDハイブリッド車の「ゴールデンアイズII」(508万円)の2グレードのみに絞られており、まさに「モデル存続の危機」といった状況だが、次期型(もしくは最後のビッグマイナーチェンジ)で、新型ヴォクシー同様、独創性を求める新たな層」に向け、攻めた「キワモノ顔」で登場する、という流れもあるだろう。

現時点のラージサイズミニバンの正解は、「後期型アルファード顔」なのだろうが、ミドルサイズミニバンの正解はこれというのが見えておらず、強いてあげれば、先代ヴォクシーのバランスだったと言えるのかもしれないが、デザインのトレンドなんてのは、終始変化するもの。新型ステップワゴンが、ギラギラフェイスとは真逆の「清潔感のあるシンプルフェイス」で登場したが、4ヵ月後となる発売日を迎えるころになれば、それが「トレンドの顔」になっているかもしれない。

とにかくミニバンは、走行性能やユーティリティといった中身より、どれだけトレンドを顔に反映させることができるか、もしくは自らトレンドを創り出すことができるか、に生命線があるようだ。

Text:Kenichi Yoshikawa
photo:TOYOTA
Edit:Takashi Ogiyama



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