ここ日本で、新車の販売台数ではドイツ車に及ばないものの、イタリアとフランスの車たちには熱狂的なファンがいます。ラテン車には、性能や品質だけでは説明できない胸に響く魅力があるのです。デザイン、歴史、エンジン、走り、音、匂い、手触り……単に移動のための手段ではなく、その人のスタイルを形づくるのに欠かせない存在がラテン車なのです。
そして、そんなラテン車たちは新車でももちろん魅力的ですが、時を経て、ユースト、クラシック、ビンテージと熟成されるにつれ、ますます存在感が気になってくるものです。
そんなわけで、世田谷区等々力にあるラテン車のスペシャルショップ「コレツィオーネ」におじゃましました。レンガの壁に覆われた瀟洒な店舗には、ラテン車好きが一日中わくわくできる販売車両が並びます。
まず目にしたのは、フェラーリ308。ピニンファリーナによるボディをまとった、3リッターV8エンジンをミッドにレイアウトした2シーター・スポーツカーで、1975年から1985年の10年に及び製造された名車です。クラシックV8フェラーリというと、長らく328が人気でしたが、ここのところ308の人気が逆転しつつあります、と同店チーフメカニックの山田さんはいいます。確かに、この繊細なデザインは他のV8モデルにはない魅力。
308最高! と感慨に浸る間もなく、ランボルギーニ・カウンタックが目に飛び込んできました。25周年のアニバーサリーモデル。こちらはすでに売約済み、とのこと。他にも、グリジオイングリッドがなんとも惹かれるフェラーリF575Mマラネロや同F355スパイダーのMT仕様が並び、買えないのはわかっていても、自宅ガレージにあったらどんな景色だろう、と想像してしまいます。
しかし! コレツィオーネは私のようなラテン車好き庶民にも優しいのです。その証拠に、屋外展示スペースには、手の届きそうな、でもちょっとマニアックな、心くすぐる車両が数多く並んでいるのです。
5年落ちのプジョー208GTi(228万円)、同RCZ(238万円)、ルノーメガーヌのルノースポール(168万円)、ディーゼルのランチアテージス(売約済)、そして、シトロエンのアミ8(売約済)、フィアット500(価格未定)、本物のアバルト595などなど。
イタリアとフランスの車は、スーパーカーからベーシックカーまで、なぜ車好きの心を躍らせるのか。もはや車という存在ではなく、媚薬といっていいのではないでしょうか。コロナ禍のなかで、生きづらさが加速しています。収入も30年間上がっていません。でも僕たちは生き続けなければいけません。そんな中、家族や友人と接する以外に、なにか心ときめくモノやコトを抱いて生きていきたい。ゴルフやジョギング、機械式腕時計、アート、そして車など、なにか趣味を持つことで日々の生活にめりはりをつけてみてはいかがでしょうか。
追記/ イタフラ車は壊れるからやめておけ、という声も聞きますが、それも含めて趣味と思えば、またをかし。直してでも付き合いたい、と思えてこそ趣味車なのではないでしょうか。生意気言ってごめんなさい。動画もあるので、ぜひご笑覧ください。
Video:Yoshihide Shoshima
Video Edit::Airi Harumi
Text:Takashi Ogiyama
コレツィオーネ
東京都世田谷区等々力7-2-32
03-5758-7007