若かりし青年があっという間に中年となっているように、かつては高嶺の花だったピッカピカの新車も気がつけば中古車に。あの時は高くて買えなかったけど、今ならイケるかも!? な妄想を抱く二人の中年が、とっておきの中古車を探訪する動画連載。今回は最初期のナローポルシェ2台を探訪してきました。
改めてナローポルシェを振り返ると、1963年に発表、翌年販売された901(0シリーズ)に端を発します。1967年にはL、T、S、Rなどのグレードに幅を持たせたAシリーズ、1968年にはホイールベースを延長したBシリーズ、1969年の排気量を2.2ℓに拡大したCシリーズ、70年代に入り、D、E、Fとナローポルシェは進化を続け、1973年のいわゆるビッグバンパーのGシリーズへバトンタッチされたのでした。
今回拝見したナローポルシェは1966年モデルで、0シリーズのもの。フェンダーの抑揚はまだなく、どこかポルシェ356を彷彿とさせるボディシェイプが特徴です。しかも、リアにマウントされるエンジンは4気筒! そう、こちらは911ではなく、912なのです。
旧車のスペシャル店「ヴィンテージ湘南」の湯山代表は言います。「これ、最高です」と。リアエンジンの特性は後輪へのトラクションをかけやすいことにつきます。しかし、リアに重いエンジンがあることで、操縦性にそれなりに高度なテクニックが求められてしまいます。
こちらは4気筒ですから、とにかくエンジン自体が6気筒に比べて、軽く、そして小さい。6気筒ではオーバーハングにまでエンジンが存在しますが、こちらはリアタイヤの上にちょうど収まるほど。
走ってみるとこれまた軽快、爽快で、4気筒ならではのパンチ力もあり、パタパタとどこまでも走り続けられそうな気分にさせます。お値段は1000万円だと言います。同時期の最初期911の約半分ほどの値段でしょうか。では、車の魅力も半分か。絶対にそんなことはありませんね。
それならば、912に比べ、6気筒の911はダメか、というと、こちらはこちらで、たっぷりと魅力があります。Aシリーズの、1967年型で、グレードは「S」。ちなみに、エスとはスポーツの意。ノーマルが130psなのに対し、こちらは160psを発揮します。
高回転までエンジンを回した時の高揚感は言うに及ばず、低回転でもぐずることなくスイスイと街の流れをリードします。調子のよさはアイドリング時によくわかります。一定の回転数で、振動もなく、澄んだ音がするのです。
「30年前なら300万円でナローが買えたんだぜ」「いや今はもう高騰しすぎて買うべきではありません」など購入を思いとどまらせるご意見が多々あることは承知の上です。でも、30年前に300万円で買ったナローを今も持ち続けるのにいくらかかったのか。たくさん直しても完調までには程遠く、気づくとサビが増えてきた……。
ならば、いま1000万円、2000万円出して完調なナローポルシェを手に入れることを単純に否定することはできない、と思うのです。もちろん、手に入れたのがゴールではなく、そこからがスタート。どう付き合っていくか。金はそれなりにかかるでしょうが、それ以上に得られるものがナローポルシェをはじめ、旧車の世界にはあるのです。
Video:Yoshihide Shoshima
Video Edit::Airi Harumi
Text:Takashi Ogiyama
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