外へ出る"戦闘準備"の際には、これくらいの気合入れが欲しい
さて、236回目も続けて、エルメスの靴べら「シューホーン GM」です。
靴べらは、英語でシューホーン(Shoe Horn)。
ホーンは「角(つの)」と言う意味で、元々は動物、雄の水牛の角を使った靴べらが主流だったんですが、こちらはブナ材。
黒っぽく見えますが、マロンというカラーネームの通り、濃いめの栗色です。
丁寧に削り出してあるので、まったく引っかかることなくスポっと靴が履け、そしてスッと抜き取れます。
以前は、アビーホーン(ABBEY HORN ※前身のThe Horn Workは、1749年にイギリス南西部で設立し、270年以上の歴史)の、10cm強で携帯もできる牛の角タイプを使っていたんですが…
うさぎ小屋のような家の玄関で、短いシューホーン使って靴履くのって正直シンドい。しかも齢45にもなると、あちこちガタがきて、とくに腰に負荷をかけると 魔女の一撃 a.k.a. ギックリ腰を喰らう危険性も。
それが怖くて、長さが50cmもあって、立ったまま楽な姿勢で使える、エルメスの「シューホーン GM」を清水ダイブしちゃいました。
たまに、靴を履く際にシューホーンを使わないという方がいますが、それって本当に靴に良くありません。かかとも履き口も傷みます。
靴を脱ぐときに きちんと紐を緩め、履くときにシューホーンを使って足入れするだけで、靴は だいぶ長持ちするんです。これはスニーカーでも一緒です。
「あれ? でも、結局 靴紐結ぶときに屈むんだから、長い靴べら必要ないじゃん」
そう思った人いますよね。ただ、僕の場合は足入れした時点で玄関を出てしまい、前の階段の段差を利用して靴紐を結んでるんで、やっぱり長いシューホーンが必要なわけです。遠目から見たら、波止場の石原裕次郎みたいなのかもしれません(笑)。
価格は2万円オーバーなので 決して安い買い物ではありませんが、靴を履いて家を出るのは"戦闘準備"は言い過ぎであっても、心構えをしっかりと強固にする大切な儀式。
さらに大好きな靴を履くときに使う道具なので、一番気持ちがアガるものを使いたい。ってことで、プロダクトとしても美しいエルメスを選びました。
おそらく、折れるようなこともないでしょうし、靴履けなくなるくらいまでは玄関に鎮座するから、きっと減価償却して元は取れるはず。
ところが、ここ2年はコロナ禍で靴を履く機会自体が減り、玄関でのんびりとぶら下がって完全にインテリア化してるんですが……
Photo:Shimpei Suzuki
Text:Ryutaro Yanaka