いま世界的に自動車業界を席捲しているのがSUV。頑なにスポーツカーにこだわってきたアストンマーティンやランボルギーニはもちろん、フェラーリですら、SUVを計画中だというこのブームは、まだしばらくは続くとみられます。

「SUV」とは、ご存じの通り、「Sport Utility Vehicle」の略であり、多くの荷物を載せてレジャーに行くなどに適したクルマのこと。その中でも、昨今は「クーペSUV」というジャンルが注目されつつあります。
なぜ、クーペSUVがここまでブームとなっているのでしょうか。
■セダンやスポーツカーにとって代わる存在
たとえば、2020年6月に新型が登場したトヨタハリアーは、元祖クーペSUVとして、特にお馴染みです。トヨタによると、ハリアーは今回のモデルで、「SUVというカテゴリを超えた、抗いたがい魅力に満ちた存在」を目指したそう。要するに、「SUVのかたちだけど、SUVというカテゴリに縛られず、魅力的なクルマをつくった」ということ。
これは新型ハリアーに限ったことではなく、すでに飽和状態であるクロスオーバーSUV市場おいて、新鮮味を与えたかった、ということがあるのでしょう。SUVがさまざまな方向に発展しすぎて、「SUV」というカテゴリ名が、合わなくなってきている状態なのかもしれません。

また、自動車メーカー側が、背の高いSUVに、背の低いスポーツカーの走りのイメージを持たせ、本来は鈍重なイメージのSUVをスポーツカーの様にきびきびと走らせる、という方向性に魅せたい、ということも考えられます。
ちなみに、同じような流れが、かつてミニバンカテゴリで起きていたことを思い出す方も多いでしょう。2000年頃に出たホンダストリームやウィッシュ、オデッセイなど、多人数乗車が売りのミニバンで、キビキビしたハンドリングを魅せたかった、という流れとそっくりです。その後、背低ミニバンは衰退し、今やほとんど絶滅してしまいました。

今回の「クーペSUV」もまた、スポーティなクルマが欲しいお父さんと、実用的なクルマが欲しい家族との折衝案、というところでしょうか。そうしたこともクーペSUV人気に拍車をかけている理由のひとつかもしれません。将来、このSUVブームがどうなっていくのか予測することは難しいですが、まだしばらくはこの流れは続いていくものと思われます。
■人気SUVの大半が「クーペSUV」
昨年2020年の登録車販売台数ランキングを見ると、2WDと4WDを含めたSUV売り上げトップはトヨタライズ(12万6038台)でした。登録車全体でも2位という成績は、お見事の一言です。

その他、登録車ランキング30位以内に入ったSUVは、販売台数が多い順に、トヨタハリアー(6万6067台)、トヨタRAV4(5万4848台)、トヨタC-HR(3万3676台)、ホンダヴェゼル(3万2931台)、ダイハツロッキー(3万1153台)、マツダCX-30(2万7006台)、トヨタランドクルーザー(2万6296台)、マツダCX-5(2万4222台)の8台でした。

このうち、クーペSUVと言われるSUVは、トヨタハリアー、トヨタC-HR、ホンダヴェゼル、マツダCX-30。SUV全体の大半を占めていることがわかります。ちなみにホンダヴェゼルは、4月末にフルモデルチェンジを控えており、人気モデルであるヴェゼルの新型登場をきっかけに、クーペSUVブームがさらに加速することも予想されます。
■本格SUVやコンパクトSUVも人気!!
一方で、オフロード性能が高く、SUVらしいクルマも依然として人気があります。その代表格がトヨタRAV4でしょう。RAV4は、2020年には5万4848台を売り上げ、SUVカテゴリ内ではハリアーに続く3位にランクインしています。

他にも、スバルフォレスターや、2021年内のモデルチェンジがうわさされている日産エクストレイルや三菱アウトランダーなど、しっかりとSUVとしての装備をもったクルマももちろん健在。

昨今では、ライズやヤリスクロスのようなコンパクトSUVも需要が高く、ユーザーのさまざまなニーズに対応したSUVが用意されています。
■クルマも時代と流れとともに進化していく
環境問題や技術の発達、人々の生活や意識の変化、多様化など、時の流れとともに重要視されるもの必要とされるものは変わって当然。時代の流れとともに進化するクルマに、今後も期待しています。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:TOYOTA,HONDA,SUBARU
Edit:Takashi Ogiyama
