LIFESTYLE ― ユキサイクロペディア2020 ユキちゃんの衣食住おべんきょう帖

東京・下北沢「山本商店」──和家具を極める(前編)
見た瞬間に“良い味出しているね!”と感じるチカラ

2020.6.27 2020.6.27
2020.6.27

「ドクトル赤峰のファッション哲学とスタイルはよく分かったが、ドクトルを形成している“栄養分”を知りたい」──という声に応える赤峰幸生の衣食住に迫る連載、第3回に訪れたのは、今年創業75年を迎えた時代和家具の店『アンティーク山本商店』です。ドクトルのお供を務めるのは、インコントロの元アシスタントの三浦文子さん。「赤峰さんに、日本人たるものちゃんと着物を着られないとダメだと言われて、いただいた浴衣を着てきました」と登場です。

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地下1階から地上2階まで、隙間なく積み上げられた和家具や雑貨たちに囲まれて
かつては私たちの暮らしの中に当たり前にあった和家具たち

まるで計算し尽くしたように天井近くまでギッシリと積み上げられた時代箪笥や本箱、小抽斗などを見上げて、「これはまるでドンキホーテのようなディスプレイですね」と笑うと、『アンティーク山本商店』三代目店主の山本明弘さんは、「初代の祖父の時代からこういう陳列で、うちがきっと元祖ですね」と笑顔で応えてくれました。

明治・大正・昭和の家具職人によって丁寧に作られた和家具たちが、山本商店の9人の職人の手によって修理され、生き返って、令和に輝きを放つのは、まさに時代が要請するサステナビリティそのものです。

赤峰 先日も山本商店で大判の引き出し付きの勉強机を購入させてもらいました。

山本 いつもありがとうございます。気に入った机があってよかったです。

赤峰 自分には父や母が使っていた家具の記憶があるので、こういう家具や雑貨は普通にあって、やはりノスタルジーを感じます。山本商店は、いわゆる古道具屋ではなくて、経年変化を大事にしながら、上手に味を出していますね。僕らが洋服のボタン一つを大事にするのと似ています。

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昭和初期に作られた衿箱。衿箱とは和服を着るときに使う半襟を収納するのに作られた箪笥で、上部の乱れ盆に半襟、下の引出しには帯留や帯紐などの和装小物を収納した
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昭和40年代の扇風機(使用可)。夏にピッタリな硝子瓶と浮き球とともに

山本 日本の古い家具はクオリティが高くて、職人の真面目さ、几帳面さ、心意気が全部詰まっています。目に見えないところにものすごくこだわっているので、それを尊重しつつ、後世に残したいという思いがあります。

赤峰 洋服もそうですが、今と昔では材料・素材が違うし、職人の手のかけ方やこだわりが全然違います。だから、“もつ”んですよ。私も20年前に仕立てたスーツはやっと身体に馴染んできたところです。

山本 私どもは、仕入れてきたものを長く使ってもらうことを前提に職人が手をかけて、子供や孫の代まで引き継げるいわゆる「一生モノ」を提供していますが、アンティークの味や良さを損なわないようにする手の加え方が難しいですね。

赤峰 確かにそうですね。磨きすぎても味がなくなってしまいます。

山本 そうなんです。見た瞬間に「良い味してるね!」と言われたいんですね。それを皆さんの日常の中で普段使いしてほしい。

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右側は「ダイヤ硝子」と呼ばれる凹凸のある硝子が使われた昭和初期の本箱。卓上用や吊り下げタイプの照明器具も充実している
今の日本の生活様式にすんなりフィットする和家具の凄さ

三浦 私は赤峰さんに山本商店さんのことを教わって、2年前に買った本棚を使っています。古い家具はすんなりと自分が積み上げてきた暮らしに馴染むところが好きなんですが、昭和の本棚なので棚の高さが低くて、文庫本は収納できるんですが、大型本が入らなくて、「日本のサイズなんだなぁ」と改めて思いますね。

山本 三浦さんはヴィンテージ家具のどういうところに惹かれますか。

三浦 時代を超えてきたモノが身近にあると不思議と気持ちが落ち着くんです。自分の中にある「懐かしいもの」が揺れるというか……。白木の家具より色が深くて安心感があるし、何年もいろんなことを乗り越えてきたんだなとも感じますね。

赤峰 いわゆる「馴染み」が良いんだろうね。三浦さんはヴィンテージの洋服も食器なども好きだし。

山本 昔から古いモノはお好きだったんですか。

三浦 昔、古い皿を見つけたとき、「何て美しいものがこの世の中にあるんだろう」と思いました。現代の食器とは違う肌触りや、皿を重ねたときの音の違いが新鮮で、古いモノに目が行くようになりました。それから赤峰さんと出会って、「好きな食器があるなら、洋服や家具なども同じように見たらいいんだよ」とアドバイスをいただいて、自分が良いなと思う感覚は、衣食住すべてに通じることを知りました。どれも「時代を乗り越えてきた良さ」がありますね。

赤峰 流行りの言葉でいうと「サステナビリティ」だけど、ここにある飯茶碗一つをとっても、毎日の暮らしの中に溶け込んでいくと愛着が出てきて、人のモノが自分のモノに変わっていく。そういうのもクラシックなんですよ。

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有田焼赤絵の蓋付飯茶碗は昭和後期に作られたもの。5客で3850円(税抜)
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昭和初期に作られた茶箪笥の下部。引き戸の左側には身を守るための笠や杖、その間にあるのは「宝巻」と呼ばれる巻物で知恵を授けてくれる象徴とされている。右側の引き戸は背負子で、重い荷物から背中を守るという用途から、災いを避けるという意味が込められている

山本 和家具の凄いところは、洋家具を畳の上に置くと違和感があるんですが、和家具をフローリングや絨毯の上に置いても映えるんです。

三浦 あ、なるほど。本当ですね。

山本 今、お客様に届けるときはほとんど洋室ですが、和家具には、和洋共に溶け込む力があります。

赤峰 それは、デザイン性の高さゆえですね。

山本 おっしゃるとおりです。でも、こういうヴィンテージ家具も“売れる流行”というのがあります。

三浦 なんでしょうね。こういう家具は安定して売れる印象がありますけど。

山本 その時代の家電や雑貨に左右されますね。たとえばブラウン管のテレビのときは、奥行きのある家具が売れましたが、今は、奥行き30~40cmのローボードタイプが人気です。色も濃いものより明るめの色が好まれていますね。

三浦 私は違いますが、雑貨やキッチン用品がポップな色使いが多いからですか。

山本 正解です。コーディネートを考えると、明るめの色の方が映えるんですね。

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檜材で作られたお櫃、蓋が無いので木桶として安価にて販売している。オリジナルの使い方以外に、アイデア次第で用途は広がりそう
三者三様の、コロナ禍の下でのサステナビリティとは

赤峰 なるほど。コロナ禍の下での自粛前と自粛後では、何か変化はありましたか。

山本 自分の中ではこういう商品は不要不急ではないと思っていたんですが、お客様から、「自分にとっては不要不急のものです」と言われて、必要とされていることを改めて感じた時期でしたね。

三浦 私の世代は、学校の授業で「資源は限りがある」と厳しく言われ続けた気がします。だから、モノは有限というのは小さいときから意識の中にありますね。今ではサステナビリティと言われますが、節約はすごく気にしています。

赤峰 本当に今回のコロナ禍では、いわゆる使い捨てや便利さに甘えて暮らしてきたことに対する跳ね返りを感じている人が多いと思う。自粛生活中にみんな断捨離をしたと言っているけど、「自分の暮らしの要と不要」ということが身に染みて分かったんじゃないかな。

三浦 衣食住のすべてを一度見直す良い機会だったと思います。

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本館両隣には横に広い倉庫兼作業場があり、ここで職人たちが修理や塗装を施している。リペア前の家具がたくさん並んでいるので、常連のお客様がまず先に目を通す場所だ

アンティーク山本商店

東京都世田谷区北沢5-6-3
Tel. 03-3468-0853
11:00~19:00
月曜定休(※祝日の場合営業し、翌火曜日が振替休業)

三浦文子さんのインスタ『自力インスタ 365日』もチェック!

Photo:Riki Kashiwabara
Text:Makoto Kajii

Author profile

梶井 誠
梶井 誠
Kajii Makoto

今はなき講談社のメンズファッション雑誌『Checkmate(チェックメイト)』編集部のファッション班を経てフリーランス。セレクトショップのカタログやメンズ雑誌のファッションページの取材・原稿を担当。SKE48箱推し、フィロのス・奥津マリリ推し、ジュビロ磐田サポーター。1961年福井県出身。©Seo Hiroshi

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