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FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
LIFESTYLE ユキサイクロペディア2020

人形町「㐂寿司」――鮨と寿司屋を極める(前編)
㐂寿司の鮨は、サルトリアの鮨である

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「ドクトル赤峰のファッション哲学とスタイルはよく分かったが、ドクトルを形成している“栄養分”を知りたい」――という声に応えて、赤峰幸生の衣食住に迫る連載をスタート。

記念すべき第一回に訪ねる店は、「自分が三十数年間通う寿司屋がいいねぇ」と即答。ドクトルを師と仰ぐ書生と連れだって向かったのは、「人形町に㐂寿司(きずし)あり」と言われる名店!

「きちんとしたお寿司屋さんに入ったことがないんです」

㐂寿司の磨き上げられた檜のカウンターでドクトルの横に座るのは、田代一輝さん。立つと184cmの長身で、小中高とバレーボール一筋。高校は推薦で入ったほど打ち込んでいたそうですが、なんと3月から赤峰さんの会社・インコントロに入った23歳です。

大学卒業後、某百貨店に就職して一年勤務。FORZA STYLEが発信している動画『ユキちゃんのひとりごと』でアシスタントを募集しているのを知って応募し、めだか荘での面接を経て、めでたく入社が決定。「きちんとした寿司屋に連れて行ってやろう」という赤峰さんと一緒に、㐂寿司で旬の鮨をいただきます。

㐂寿司の外観は、「今は昭和か?」と思うほどタイムスリップした感じのどっしりとした風格のある店構えで、30年ほど勤めている職人の山岸利光さんに尋ねると、「このあたりはもともと花柳界の街で、置屋だったのを戦後に改装して寿司屋にしたそうです。この一角は空襲から逃れたので、こういう建物が残っているんですよ」と説明してくれました。

良い寿司屋を見分けるポイント、教えます!

赤峰 この㐂寿司さんは、「寿司三大始祖」と称され、握り鮨を考案した華屋與兵衛の流れを汲む老舗。敷居はけっして低くはないけど、なんとも良い空気が流れているのがわかりますか。

田代 はい、緊張していますが、よろしくお願いします。

赤峰 自分はもう40年近く通っているんだけど、寿司屋を見極めるポイントは、山岸さんの後ろにある冷蔵庫。電気じゃなくて、氷の冷蔵庫。ネタを良い状態に保つには電気じゃダメなの。

山岸 赤峰さんのおっしゃるとおりで、電気冷蔵庫だとネタが乾燥してしまいます。この氷の冷蔵庫は適度な湿度があって、この中で冷やしていると、ネタのアタリが柔らかいんですよ。これは二台目ですが、管理は大変で、氷は8貫ぐらい入ります。

赤峰 今度、寿司屋に入ることがあったら、そういうところもウォッチした方がいいね。


年季の入った氷の冷蔵庫。氷屋が毎日通ってきます

江戸前の鮨を教えてくれたのは、「㐂寿司」先代の隆一さん

田代 赤峰さんはこの㐂寿司で鮨を覚えたんですか。

赤峰 今は、四代目の一浩さんが暖簾を守っているけど、自分は先代の隆一さんに江戸前鮨を教わった。先代は東京中の鮨職人が慕うような本当の名人だった。「寿司屋の主導権は店ではなく客の側にある」というのも教わったねぇ。

田代 赤峰さんはいつもお任せなんですか。

山岸 もう私どもが「お好きなモノ」を分かっていますから。

赤峰 コハダも旨いけど、8月後半から9月の新子(シンコ)の時期になるとそわそわしちゃってね。㐂寿司に来ると、お茶を6杯ほど飲んじゃうね。

田代 6杯!

赤峰 お茶が不味いところはだいたい鮨も美味くないね。


先代の故・油井隆一さん

「こんな柔らかいイカ、食べたことがない」と田代さんが驚いた煮いか。ヤリイカを柔らかく煮て、ツメも絶品

ドクトルが㐂寿司で「赤身」しか食べないワケ

赤峰 この煮いか、口の中でどういう香りがする?

田代 えーと、柚子ですか?

赤峰 当たり。そうですよ。「桃栗三年、柿八年、柚子馬鹿十八年」ですよ。

田代 なんですか、それは。

赤峰 桃と栗は早く収穫できて、柿は八年かかる。さらに柚子は植えてから実がなるまでに十八年もかかってしまって、生産者にとって馬鹿野郎という意味。


手前が職人の山岸利光さん、奥が「㐂寿司」四代目の油井一浩さんの弟の厚二さん

田代 なるほど。赤峰さんは地方でも寿司屋へ行きますか。

赤峰 地方だとね、女郎寿司みたいになっちゃうから、あまり得意じゃないね。

山岸 (笑)

田代 その「女郎寿司」って何ですか。

赤峰 シャリを小さくして、ネタを大きく見せる鮨で、着物の裾をダラッとしているように見えるからそう呼ぶんですよ。ネタがデカけりゃいいっていうもんじゃない。

田代 赤峰さんはトロは食べないんですか。

赤峰 自分は赤身しか食べない。その心は、「自分、あかみねですから」

一同 (笑)


江戸前鮨には欠かせないスミイカ。口に入れるともっちりとした噛み応えがたまりません

㐂寿司の鮨は、「サルトリアの鮨みたいなもの」

田代 スミイカ、こんなに甘いイカは初めて食べました。

赤峰 旨いでしょう。当たり前だけど“仕事”をしているんだよね。江戸前はいわば「仕事を食べさせていただいている」わけで、職人さんが河岸(かし)でその日の魚の顔つきを見て選んで、それを仕事して、僕らが口にさせていただいている。洋服の生地でも食べ物でも結局「手間ヒマ」なんですよ。どう丁寧に仕事しているか――㐂寿司の鮨は、サルトリアの鮨みたいなものですよ。

田代 鮨の仕事って何ですか。

山岸 江戸前の鮨は切りっぱなしを使わず、酢や塩で〆たり、熱を加えて煮たり、醤油や煮汁に漬けたりしてお出しします。

赤峰 今のように冷凍の技術や輸送手段が発達していなかった頃の知恵だけど、丁寧に仕事をすることで、魚の旨味を引き出しているんだね。

田代 赤峰さんを見ていると、洋服はもちろん、「クラシックってこんなに楽しいモノがあるんだよ」とたくさんの引き出しをお持ちです。赤峰さんから「暮らしの本物」を教わりたいなと思っています。

赤峰 田代君は大学時代、ボランティアに積極的に関わっていたんだよね。

田代 はい、「人の役に立つこと」として、フィリピンの支援を行いながら、環境や貧困について考えてきました。そういう活動を通じて、赤峰さんが実践する「良いモノを長く大事に着る」ことに感銘を受け、赤峰さんの考え方や知識、センス、感性を「日本の暮らしのクラシック」として、国内外に広めたいと思います。

 

㐂寿司
東京都中央区日本橋人形町2-7-13
03-3666-1682
営業時間:11:45~14:30、17:00~21:30(土のみ17:00~21:00)
定休日:日曜、祝日
アクセス:東京メトロ「人形町駅」より約2分

 

Information①
Akamine Royal Line & Fox Brothers オーダー会開催

Akamine Royal Line では、3月19日(木)と20日(金・祝)の2日間、有楽町の阪急メンズ東京の5階オーダーサロンにて、「Fox Brothers」とコラボレーションのオーダー会を開催いたします。
本イベントでは、フランネルで有名な200年以上の歴史を誇る英国の老舗生地メーカー「Fox Brothers」の生地を、AKAMINE Royal Lineの採寸・仕立てで、スーツとジャケットをオーダーしていただけます。

さらに本オーダー会では、Fox Brothersが保有する貴重なアーカイヴ生地を多数ご用意。また、ご注文いただいたスーツとジャケットにはスペシャルレーベルをお付けいたします。

オーダーはアポイント制となっていますので、19日(木)~20日(金・祝)の11時~17時の時間内で、ご希望の日時をメール(info@incontro.jp)または電話(044-871-5330)まで事前にインコントロ(担当:関根・渡邊・田代)までご連絡をお願いいたします。

 

Information②
ユキちゃんも脱帽&気絶!
『365日の服 献立 わたしの自力インスタ』三浦文子個展 開催

「沢村貞子さんの献立本に影響を受け、わたしは毎日の服でやってみようと描き始めました」というイラスト展が3月17日(火)から28日(土)まで開催。

『365日の服 献立 わたしの自力インスタ』というタイトルは、「自分自身の毎日の着こなし、淡々とした日常の中の服を描いているということで365日の服 献立。そして写真でないので『手描き』=『自力』のインスタです」と三浦文子さん。女子美術短期大学卒業後、アパレル会社に就職し、現在も販売の仕事をする傍ら毎日の着こなしを描き続けています。

『365日の服 献立 わたしの自力インスタ』
3月17日(火)~28日(土)
火曜から土曜8:00~20:00
※日曜日および月曜日は定休日
会場:森の酵母 パン・オ・スリール イベント・ギャラリースペース
東京都渋谷区渋谷1-4-6 1階
(渋谷駅から徒歩5分、表参道駅から徒歩9分)

Photo:Shimpei Suzuki
Text:Makoto Kajii



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