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LIFESTYLE

【連載】拝啓、40男(イケフォー)諸君。
『最近、だれかを口説いてますか?』
Vol.6 「蕎上人」で粋な夏の大人デート<後篇>

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そばでわかる男のこだわりと優しさ

そばは二八? 十割?

伝説のそばの名店「一茶庵」。その流れをくむ浅草の「蕎上人」もまた、そばの名店として、全国にその名を轟かせています。

創業者・平沼孝之氏は現在、「駒形蕎上人 そば・うどん教室」を開き、そば打ちなどを教えています。全国の名店と呼ばれるそば屋の中には、同教室出身の方が開いた店も数多くあります。

そば屋を取り仕切っているのは、平沼氏の義理の息子さんである福田純一氏。同氏に話をうかがいました。

まずうかがったのは、そばについてです。蕎上人のそばは二八そば。そば粉が8割、つなぎの小麦粉が2割です。「そばは10割に限る」なんて言う人もいるようですが……。

「確かにそば粉が10割だと、そばの香りがより一層強くなります。だけど、つなぎがないのでモソモソっとした食感になりがちです。その食感が悪いというわけじゃありません。そば粉10割の田舎そばもおいしいですよね。ウチでも頼まれれば、10割で打つこともあります。

一方、二八そばはつなぎが入っている分、歯ごたえ、喉越しがよくなります。また、江戸前そばは伝統的に二八そばで、江戸っ子は二八を好むと言われています。ですから、ウチでは二八にしています。どちらがいい、悪いという話ではなく、好みの話ですね」 

そばでわかる男のこだわりと優しさ

もうひとつ、ぜひうかがいたいことがありました。そばを食べる際のマナーに関してです。そば好き、そば通のことを"そば喰い"なんて言いますが、そんなそば喰いの中には、最初は何もつけずにそばの香りを楽しむべきだ、そばは汁にドップリつけるものではないなど、いろいろ言う人もいます。さて、そば屋から見てどうなのでしょう。

「そばは茹でた瞬間から、ずっと伸びていきます。ですから、できればお出ししたらすぐに召し上がって頂きたいな、とは思います。だけど、お出ししたら、あとはお客様の自由。汁にドップリつけて食べるのが好きなら、それはそれでいいんじゃないでしょうか」

「こうして食べたい」というこだわりを持つことも、その人の自由。しかし、同伴者に口やかましく「こうすべし」と講釈をたれるのは、見ていていい気持ちはしないし、同伴者が不愉快に感じることもあるでしょう。特にデートで、知った風にあれこれ言っても、モテるわけがありません。

こだわりがあるのなら、さりげなくその姿を見せ、気づいてくれればそれでよし、気づかなくてもそれはよし。それくらの広い気持ちでいることこそが、モテる大人の男の条件なんじゃないでしょうか?

蕎上人の創業者・平沼氏は著書『浅草人生 そば道場』でこのようなことを言っています。

「店を始めた当初は、うまいそばを出したい一心でそばを打っていました。そうすると、お客様からこんなことを言われました。『あなたのそばは食ってみろと突きつけるようなそばだ』と。そこで、お客様においしいそばを召し上がって頂きたいという心を込め打つようになり、そばの味も変わりました」

福田氏も同様のことを言います。

「毎日、同じ材料で同じようにそばを打っていても、味が違うんですよね。火入れやちょっとした分量の差、湿度で変わります。そればかりか、体調が悪いとだらしないそばになるし、充実した気持ちで打てば、キリっとなる。シンプルな料理ですから、そうしたほんの小さなことでもできあがりに影響を及ぼすんです」

ここで語られていることは、おいしいそばの作り方ということだけではないでしょう。謙虚に相手を思い、優しい気持ちで人や物事に相対することの大切さを説かれているように感じます。

こだわりを持つことは男の魅力。だけど、それを相手に押し付けるのはただの傲慢。優しい人たちによって打たれたそばを食べれば、こちらの気持ちも優しくなり、優しさのなんたるかが見えてきます。

さりげないこだわりを出しつつ、相手に何かを押し付けることなく、うまそうに、格好良くそばをすする。これこそが粋な男でしょう。 

 

<前篇>
≫≫『心を感じる手打ちそば』≪≪

Text:Hiroshi Goto(Kanzo_Koshi)
Photo:Asami Kikuchi
Arrange:media closet

蕎上人
東京都台東区駒形2-7-3
03-3841-7856
11:30〜14:00(L.O)
17:00〜20:30(L.O)
定休日/月曜日、第2・4日曜日
http://www.soba-shonin.jp/index.html


【バックナンバー】
Vol.1 「リュクスな"イタメシ"×東京・神田」という選択

Vol.2 イタリアンシェフの非常食は口説き上手

Vol.3 築地の秘扉と、海栗BARと。
<前篇>築地の隠れ家はウニの宝庫
<後篇>『商売は流行ればいいというわけじゃない』

Vol.4 料理と酒が奏でる、美しき音階。
<前篇>料理とお酒の、意外なカップリングに「ドキッ!」
<後篇>日本の魅力を発信したい

#番外編 銀座の「卯月」で学ぶ"一見の流儀"


Vol.5 焼鳥「床島」の美に感じる戦慄
<前篇>ひと噛みごとに味わう感動
<後篇>焼鳥の難しさと一期一会

Vol.6 「蕎上人」で粋な夏の大人デート
<前篇>心を感じる手打ちそば
 

 



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