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【連載】拝啓、40男(イケフォー)諸君。
『最近、だれかを口説いてますか?』
Vol.5 焼鳥「床島」の美に感じる戦慄<前篇>

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ひと噛みごとに味わう感動

数多くの飲食店が軒を連ねる東京都・三軒茶屋。そんな三軒茶屋でひときわ人気を博しているのが焼鳥店「床島(とこしま)」です。

杉玉が吊られている入口には、控えめに照っている看板がひとつ。扉をくぐると、カウンターがコの字に配され、椅子が並んでいます。カウンターの上には箸のみ。飾り気のない、余計な物を一切排した、シンプルながらも美しい店内です。

席に着き、まずはねぎ間、手羽先を注文します。綺麗に整い刺された串は芸術と言っても過言ではありません。真剣な眼差しで振られる炒られたサラサラの塩すらも絵になります。串が炭台に乗せられると、脂が備長炭に落ち、じりじりと心地のいい音を奏でます。

そして焼き上がった2本がこちら。

キツネ色に焼けた皮、弾けんばかりの身。肉が串に刺さっているだけだというのに、なぜゆえにこれほど美しいのでしょう。あまりの美しさに戦慄さえ覚えます。 

もちろん、見た目だけではありません。ねぎ間の肉は噛むとパリっと皮が音をたてます。そして、適度な弾力を感じつつ、歯が肉に刺さり入る刹那、肉汁がジワっ。鶏のうまみとほのかなネギの香りが口いっぱいに広がります。

手羽先も同様です。香ばしい皮とジューシーな肉をひと噛みしたら、あとは我を忘れてかぶりつくのみ。

次は血肝(レバー)。タレはしょっぱくもなく甘くもない、醤油のまろやかさだけが残った絶妙な味わい。鶏のうまみを邪魔しない、ギリギリのラインで調整されています。最適に火入りされたレバーは口の中でトロけ、あまりのおいしさにため息が出るほど。焼鳥1本、いえ、鶏肉ひと噛みにこれほど感動を覚えるとは……。

シンプルであるということの意味

焼鳥に続いて一品料理も頂きます。最初は鴨のたたき

茨城産のフランス鴨はその場で手際よく解体されます。

モモ部分を広げるように串に刺し炭であぶります。したたり落ちる脂、立ちあがる煙、チリチリという音、香ばしい香り、焼き上がりを教えるべく徐々に縮んでいく鴨……ああ、このライブ感!

できあがった深紅の。伸ばす箸が震えます。そして、ひと切れを口に。

クリスピーな皮、弾力のある肉感。噛めば噛むほど鴨の甘みが滲みでてきます。添えられたマスタード、醤油、ニンニク、ねぎとの相性も素晴らしい。

続いて頂いたのはレバーパテ

鶏レバーがペースト状になったパテです。クリーミーで濃厚ですが、香草のタイムが爽やかに感じさせてくれます。

いずれも、とてもシンプルです。シンプルとは単純という意味ではありません。極限まで余計な物をそぎ落とすこと。そして、最後に残った本質のみを抽出することです。これは素材のよさ、確かな腕、センス、美意識、すべてがそろってこそなせる業でしょう。

(続く)

<後篇>
≫≫『焼鳥の難しさと一期一会』≪≪

Text:Hiroshi Goto(Kanzo_Koshi)
Photo&Movie:Asami Kikuchi
Arrange:media closet

床島
東京都世田谷区三軒茶屋2-8-10 ルナパーク三軒茶屋105
03-5486-3318
17:30~23:30
定休日/日曜日、第一月曜日(月曜日が祝日の場合は日曜日営業、月曜日休み)


【バックナンバー】
Vol.1 「リュクスな"イタメシ"×東京・神田」という選択

Vol.2 イタリアンシェフの非常食は口説き上手

Vol.3 築地の秘扉と、海栗BARと。
<前篇>築地の隠れ家はウニの宝庫
<後篇>『商売は流行ればいいというわけじゃない』

Vol.4 料理と酒が奏でる、美しき音階。
<前篇>料理とお酒の、意外なカップリングに「ドキッ!」
<後篇>日本の魅力を発信したい

#番外編 銀座の「卯月」で学ぶ"一見の流儀"

 

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