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【連載】拝啓、40男(イケフォー)諸君。
『最近、だれかを口説いてますか?』
Vol.4 料理と酒が奏でる、美しき音階。<後篇>

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日本の魅力を発信したい

マスコミ取材は基本的にお断りという、料理とワイン・日本酒のマリアージュをウリにする赤坂の創作和食料理店「美音(びおん)」。車も通れないような路地にたたずむ、知る人ぞ知る隠れ家的料理店であります。

既成概念を覆すような、挑発的とも言える料理とお酒のマリアージュは、まるでポリリズム。詳細は前回の記事でお伝えした通りです。そんな「美音」のオーナー・西村利男氏に、開店の経緯をうかがいました。

 「店をオープンしたのは2013年。それまで25年間、外資系の金融会社に勤めていました。仕事柄、世界中を飛び回っていたのですが、世界を見れば見るほど、逆に日本が見えてきたのです。

残念ながらその姿はとても脆弱なものでした。日本のGDPはまだ世界第3位で、日本株式市場の時価総額もグローバルベースで約9%ありますが、残念ながらそれに見合ったビジネスがもたらされていない。以前は" ジャパン・バッシング"なんてありましたが、今は"ジャパン・パッシング"。見向きされず、スルーされている。これが現状なのです。

もっと日本のよさを世界にアピールしたい。そして、最も分かり易くそれを提示出来る事の一つが飲食だと思うんです。そんなわけで、飲食店をオープンさせました」

将来的には欧米諸国やアセアン諸国にも出店したいと西村氏。その思いは店名にも……。

『美音(びおん)』にはいろいろな意味が込められています。まず、食は音楽のようなもの。単に味わうというだけではなく、五感に訴えかけるものだと思うので、"音"という字を使っています。また、英語の『beyond』(意味:~を越えて)に音が似ています。この店を拠点に、常にチャレンジしていきたいんです。あと、外国人でも発音しやすいですし、漢字が左右対称なので絵面的にもいいかな、と(笑)」

この"チャレンジ"は、まさに美音の料理とお酒のマリアージュに見て取れます。「これにこれを合わせるか!」という驚きを感じさせてくれますし、また、お店側も客の驚く姿を見て楽しんでいるかのようです。

「美音」の挑戦とこだわり

一度見たら忘れられない、個性豊かなラベルとネーミング。その時々の「旬のもの」を仕入れているため、次も同じ日本酒に会えるとは限りません。写真(中)に映る『モヒカン生娘』のほか『ノンストップ・エロティック・キャバレー』なんて1本も(笑)
左/『一白水成』純米吟醸 右/『残草蓬莱』純米吟醸

鴨ロースに合わせた『delinea 300』というピノ・ノワール(前編参照)が試食分で終了してしまったため「この3品に合わせるなら」と、改めてシニアソムリエのシェフがセレクトした3本。これもまた、次いつ巡り合えるのかはわかりません。

こうした挑戦を可能にしているのは、オーナーとシェフに強いこだわりがあるからでしょう。

シェフはシニアソムリエでもあります。食材選び、調理、ワインの選定、すべてを一人でこなせるから、一貫性があるんです。また、旬の食材と、製造されて1~2ヶ月のフレッシュな日本酒を提供しています。つまり、同じ時期にできた食材と日本酒を組み合わせることができるというわけです。だから一層、おいしさを感じて頂けるんじゃないでしょうか。

ウチのもうひとつのこだわりは、お猪口ではなく、口の広いグラスで日本酒をお出ししているということです。これは単に香りを楽しんもらうためではありません。いきなりお酒を体に入れると、身体がビックリします。でも、香りをかぐことで、身体が慣れるんです。そうすると、お酒がすっと身体に馴染む。6品のコースだと、基本的には6種のワイン・日本酒をお出ししますが、みなさん、意外とすいすい飲まれます。グラスがこうだから飲みやすいんですね。

お客様の反応をダイレクトに感じ取れるのが飲食の面白い点。大人のお店ですから、バタバタしたくない。お客様にもゆったりしてもらいたいから、積極的に宣伝していませんし、取材もお断りしています。金融をやっていましたから、正直、これではビジネス的に大変だということは重々わかっています(笑)。ただ、本当に実力があるなら、人が人を呼び、繁盛するはずだとも思っています」

料理、酒、グラス、すべてにこだわり、挑戦し続ける創作和食料理店「美音」。その奏でるポリリズムは、美しく、そして挑発的なリズムを刻み、客を刺激してみません。

(了)

<前篇>
≫≫ 料理とお酒の、意外なカップリングに「ドキッ!」≪≪

Text:Hiroshi Goto(Kanzo_Koshi)
Photo:Asami Kikuchi(media closet)
Arrange:media closet

美音
東京都港区赤坂2-20-2 ベル赤坂 1F
03-6441-0519
18:00~26:00
定休日/月曜日


【バックナンバー】
Vol.1 「リュクスな"イタメシ"×東京・神田」という選択
Vol.2 イタリアンシェフの非常食は口説き上手
Vol.3 築地の秘扉と、海栗BARと。
<前篇>築地の隠れ家はウニの宝庫
<後篇>『商売は流行ればいいというわけじゃない』
Vol.4 料理と酒が奏でる、美しき音階。
<前篇>料理とお酒の、意外なカップリングに「ドキッ!」

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