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BUSINESS ー SONY元異端社員の艶笑ノート

大事なことはみんな女が教えてくれた

なぜ下町には靴が落ちているのか?

2017.2.18
2017.2.18

‘閉店’ではなくて‘倒産’した弁当屋

SONYのサラリーマンだった頃、昼飯で困ることなど一度もなかった。社食は充実していたし、昼食代の補助ももらえたからだ。だが、作家として独立し、個人で仕事をするとなるとそうはいかない。それが悩みの一つだった。

あの頃、近所に住む作家仲間のケンちゃんから弁当を食べようと誘われた。彼の家からうちに来る途中に、それなりにいい弁当屋があったのだ。
弁当を買ってくるのはケンちゃんの役割で、ぼくはお茶と味噌汁を用意し、二人で隅田川の川辺に座って食べることにしたのだ。

毎日11時半頃、いつもの路地で待っていると、向こうから自転車の籠に弁当を入れ、ケンちゃんが走ってくる。合流し、隅田川に向かう。川辺にはホームレスがブルーシートで家をこしらえて住んでいたが、あまりその近くだと自分もホームレスのような気分になるので、なるべく離れたところにしようと、川辺の端っこのほうの石に並んで腰掛けて食べていた。

弁当を食べていると隅田川を水上バスが通っていく。バスといっても船だが、屋根の上には観光客がうれしそうな顔で立ち、まわりの景色を見ているのがわかる。
ぼくらは弁当を食べながらたまに手を振ってやるのだが、観光客はきまってあっちを向いてしまう。きっとホームレスだと思われたのだろう。

食べていると時々風が吹き、横に置いていた弁当のフタが飛んだ。たまに向かい風の時など、フタが体に向かって飛んできて、食べ物の汁やご飯粒が服についてしまったりした。
こうなると実に寂しいものである。
服にべっとりとついた汁をティッシュで拭きながら、

「おれたち、早く売れてこんな昼飯からはおサラバしたいよなぁ」

「売れてないのが悪いんだよなぁ」

楽しいランチが突然反省会になり、

「事件でも起こして有名になるしかないのかもしれないぞ。ただし被害者としてだけど……」

「女に騙された男として、カラー写真入りで朝日新聞の三面記事になったら完璧だよね」

「言える!」

そんなことを言いながら、毎日11時半に待ち合わせ、隅田川で弁当を食べるのが日課となっていた。

だが、それも長くは続かなかった。
いつもの場所で待っていると、籠に何も入れず、青ざめた顔でケンちゃんが自転車を走らせてきた。
「弁当屋が潰れたんだ!」

「何だって?」

「いま行ったらシャッターが降りてて、倒産したって紙が張ってあったんだ」

「普通は閉店って書くだろ」

「そんなの知らないが、とにかく倒産して、店がもうないんだよ」

「どうしよう」

その後、町を探して回り、駅前に500円ランチの店を発見した。
ここまでが前置きだといえばウンザリされるかもしれないが、こうしてぼくとケンちゃんはこの店の常連となり、毎日のようにここで食べるようになった。

何かの撮影か? 男が拉致される

ある日ぼくが店に先に到着し、列の先頭で待っていると、車の急ブレーキが聞こえ、それに続けて
「何すんだ! やめろ!」

と、男の叫び声がした。

食堂から目と鼻の先で、背広姿の男が数人の男に捕まえられ、車に押し込められるところだった。ドラマか何かの撮影かと思ったが、カメラもいないし、どうも様子が違う。あっという間に車は走り去り、そこには脱げた靴が残されていた。

これは事件なのか?
力づくで押し込められていたようにも見えたが、だからといって靴まで脱げるものなのか?
後ろで並んでいる人たちと、何となくヤバいんじゃないかと話しているところに、お昼ごはん仲間のケンちゃんがやってきた。

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