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真のクリエイティブは
マイナスな事件から生まれる

CULTURE
2016.1.22 update

 「マイブーム」「ゆるキャラ」「こじらせ」「DT(童貞)」「いやげもの」……誰もが知るこれらの言葉は、当然、自然発生的にこの世に登場した訳ではない。キャッチーかつ、不思議な魅力を持つこれらの言葉は、すべて一人の男が生み出したものだ。

みうらじゅん氏...そう、ラブドールの横でサングラスの奥からこちらを見つめる、この人物である。

誰もが見過ごしてきた何気ない現象に名前をつけ、命を吹き込む。命を吹き込まれたその現象は、名前と共に世の中に飛び出し、瞬く間に脚光を浴びる。

「一人電通」彼は自身をそう呼ぶ。今までに「ない仕事」を、企画、営業、接待も全て自分でやってのけるからこそのネーミングだ。どうすれば彼のように万人の心をとらえるネーミングができるのか? どうすればアイディアを広く世に広めることができるのか? そんなみうらじゅん氏の必殺仕事術の手の内を明かす著書がこの度この世に解き放たれた。

「『ない仕事』の作り方」
(Amazon 単行本はコチラ Kindle版はコチラ

...本著を読めば、ますますみうらじゅん氏のことが気になってしかたない。そんなこんなで今回は、『FORZA STYLE』編集長・干場義雅がみうらじゅん氏を徹底解剖。ラブドールのエリカさんと編集長・干場の絡みにもご注目あれ!
 

干場:新著「『ない仕事』の作り方」読みました。これはみうらさんの仕事の流儀、全てが書かれていますよね。

みうら:一番作りたくない本というか。手の内明かしなんで(笑)。

干場:ですよね、これ読んじゃうと。みうらさんの今まで考えてこられた事が全部出てるというか、しかもこの目次見ると全てのコピーがものすごくヒントですよね。いいんですか、こんなに明かしてしまって。

みうら:何もそういう人にヒントを与えるためにやってきたわけでもなんでもないので、「こういう作り方をするとビジネス書と間違える人がいるんじゃないか」と打算して作った本だから、まんまと来て頂いて嬉しんですけど(笑)。

すごく不向きなことを、全力でやってみる

干場:みうらさんみたいな方は唯一無二の存在ですよね。

みうら:儲からないとか、してもしょうがない事とかをしてる人が少なくなっただけじゃないですか。今ってみんな儲からない事はやらないじゃないですか。俺がデビューした35年くらい前は「無駄な事をする人」が先輩諸氏も含め結構いたんです。それで僕らはそういう人に教わった事が多いので。“お金じゃない事をして進んで損をしてる人”みたいなね。

干場:それはもう、とことん自分の好きなことをやれってことですか。

みうら:いや、この本にも書きましたが、結局僕は「好きなものじゃない事」をやってるんですよね。

干場:エロスクラップとか。

みうら:いや、エロスクラップは唯一趣味ってやつで、他のやつは「こういう作りをすれば面白く見えるよ」って事がしたいだけで、俺の好きな対象物が先にあるのではなくて、逆に苦手だったり、気にはなっているんだけど決して買わない物とか、そういう物をすごくおかしく扱うというか。俺が好きな事はもう出尽くしているので、逆に「俺が関心がなくて、多分人も関心がない事」を、さも関心あるようなフリをしてやってみるという、その過程が面白いわけで。だから、俺は“すごく好きな事だけやってる”ってわけではなくて。

干場:なるほど、面白いですね。そうなったきっかけはなんだったのですか?

みうら:いま「サブカル」って呼ばれてることって、僕らがデビューした頃はそういう呼び方もジャンルもなくて、俺が思ってたサブカルみたいなことってたぶん「スキマ」って呼ばれてたやつで。先人達がやった「すごいこと」をやっても仕方がないし、もう結構やりつくされちゃっていたから当然オリジナルなんてないと思ってたので、「スキマ産業」をやっていたわけなんです。「その人達がしないこと」となると当然こっちもしたくない事だけど(笑)

それを、その人達がやったように「すごく面白く見せる」方法はないのかなって思ってたんですよね。だから別に天狗とか興味なかったけど、天狗が部屋にたくさんある人っておかしいし、無駄な努力と無駄な量があれば、人は「そのもの自体」よりも「その世界観」にグッとくるから、それを自分に洗脳させて好きになっていく過程を、モノにするというか。

干場:なるほど〜!

みうら:それは音楽でもいいし、漫画でもいいし、小説でもいいし、何でもいいんですけどその媒体に合ったやつというか、その対象物があった媒体を選んできているので、職業がないんですよね。一応イラストレーター“など”とは書いてるんですけど、まぁイラストって言っても自分のエッセイの横とかに書いてるのは僕だけど、昔のホットドッグプレスの時とかあの頃はよくイラスト書いてたけど今はそんな描いてないんで、やってる仕事は“など”なんだけど。“など”という仕事にしようと思って、新聞社とか原稿頼まれた時に必ず肩書き聞かれるから、「などです」というと「それはないから、載せられない」って言われるんですよね。でも「イラストレーターなどにして下さい」という事の方がおかしいなと思って。

干場:今回の場合は「など」とつけましょう(笑)

みうら:今回はつけてください。僕がやってるのはほぼ「など」だと思います。なんか世間の人が納得する肩書きを付けないと信用もないし、周囲がその人のことを扱えないから、そのために肩書きをつけるっていうのはどうかなと。昔、マイブームという言葉も「自分のブームを発信する役をする」ということで自分のために作った言葉だから。でもそこでもまた大きな誤解が生まれて、「みんなのマイブーム」になって流行語大賞とかもらっちゃって。誤解されておおきくなったから自分もその「マイブーム」って職業じゃなくなっちゃって。それで10年前から「一人電通」してるんだですけど。

干場:僕自身のことをお話しすると、「FORZA」をやる前はずっと紙媒体をやってきて「LEON」という雑誌で「ちょいワル」という言葉を作ったりとか、そのあと「OCEANS」という雑誌を作ってきたりとか。

みうら:俺、“『LEON』を1冊買って一番不向きなところに置く”というシリーズやってたんですよ(笑)。必ず旅行行く時は『LEON』をまず持って、たぬきの置物の横に置いたり、ものすごい不向きなところに置くんです。

干場:僕たちが必死こいて作った雑誌を、タヌキのキン○マの横に置いていたんですか! でもそれ、見てみたいです(爆笑)。みうらさんの場合はみうらさん自体が媒体だから、一人電通式と発しただけでもガーッといくと思うんですよね。それにしても、みうらさんのように“広げていく”のってすごく大変だと思うんですよね。

みうら:「みうらじゅん」はうちの事務所で雇ってるタレントなんで(笑)、彼が広げられることを言うように指示してますから。

干場:その「広げていく力」っていうのが、すごい大きいですよね。

みうら:やっぱり「すごく不向きなこと」をしないと、人は注目しないと思うから。「時代と逆行するようなこと」ってやっぱり当然目立ちますから。今58歳で、もうちょっとしたら60歳になるんですけど、僕が醸し出す“風変わり”に迫力が出てきてるみたいで。前は変わったことを頑張ってやらなきゃいけなかったけど、今は何もしてないのに「どうしたんですか」って言われるから、まぁみんな気にはなるんだろうなって。「アウトドア般若心径(※1)」をやったときも、警察から尋問されたりしていましたし。でもそれ程不審人物であるということが、「人が気になる」ということだと思うんですよね。やっぱり「マイナス」か「不審」じゃないと、人は注目しないんじゃないかと思う。

※1みうらじゅんが提唱した「般若心経」の新しい写経のことで、「般若心経」278文字を、家を出て(これを「出家」と称す)経文の文字のある市街の看板等の文字を写真に撮り(これを「写経」と称す)経文の完成を目指すこと(Wikipediaより)。

干場:では「FORZA」ももっと変な事をやったほうがいいんでしょうか。

⇒もっと変な事をやるべき!?
みうらじゅんの答えとは...(続きはコチラ

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