「君はやっぱりB型か…!」夫婦で顔を見合わせて大笑い。
占いサイトや電話占いの高額請求に関する相談が増加傾向にあるとされる昨今。占いに大枚をはたいてしまう人がいる一方で、お金のトラブルにはなりにくくとも、信じない人からすればはた迷惑なのが血液型性格診断ではないだろうか。
近頃では「ブラッドタイプハラスメント」なる言葉も出現。ブラハラとは血液型による性格判断で他者を差別的に扱うことだが、4タイプしかない血液型で性格を分類するというのは、確かに無理がある。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、単なる話題のタネとしてとらえている人も多い血液型占いにも、現代社会においては注意が必要だと語る。
「いまや血液型で他人の性格を決めつけるなどの行為は、場合によってはいやがらせと取られかねません。たとえご自身では信憑性を感じていても、他者の性格を血液型で判断するような発言は控えるのが賢明です」
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今回、結婚生活や家庭内の問題について取材をしていくなかで、義両親の血液型性格分類好きが、実家の親との揉め事を引き起こしてしまったという女性から話を聞くことができた。
「うちの両親、特に父親は根拠のない迷信や噂話のようなものを毛嫌いするのですが、夫の両親は逆にそういう話に目がありません。以前は定期的に両家で行っていた食事会も、そのせいでなくなってしまいました」
こう話すのは雑貨店経営者の森下千由紀さん(仮名)。千由紀さんの義両親は特に血液型性格診断に目がないという。
「私も両親の影響を受けているので、最初義両親が血液型の話をしてきた時は正直『こういうタイプだったのか、残念だな』と思いました。夫の口からはそんな話題は聞いたこともなかったので、意外でもありましたね」
ことあるごとに血液型に関する話題を持ち出す義両親だが、初めて血液型の話題を振られたのは意外にも結婚数年後、千由紀さんが第一子の血液型を入園前に調べた時のことだった。
「2歳で入園させる際、提出書類に血液型を記入する欄がありました。後になって『不明』と記入すれば良いことを知ったのですが、必要だと思い込んで調べたんです。で、何気なく義両親にその話をしたら、2人とも目の色を変えて……」
検査の結果、千由紀さんのお子さんの血液型はB型だった。
「『てことは、もしかして千由紀ちゃんもB型?』とお義母さんに聞かれました。はいと答えると、夫婦揃ってしたり顔になり、『やっぱりなあ! B型だと思った』と顔を見合わせて大笑いしたんです。驚きました」
結婚・出産を経て結婚生活は4年が経っていた。それまで嫁の血液型推理を夫婦だけで楽しんでいたのだろう、と千由紀さん。
「私は知らなかったのですが、姑の話では、前に血液型のことや孫の名づけの姓名判断のことで夫と親子喧嘩になったそうなんです。で、千由紀にはその手の話を振らないでと夫が釘を刺したというんですね。でも、孫の血液型を知って我慢できなかったんでしょう」
義両親は「千由紀ちゃんは空気を読まないマイペース人間だから、絶対にB型だよねって2人でいつも予想してたのよ」「おれたちは夫婦揃ってO型なんだよ。おっとりっていうか大らかだから、気まぐれなB型とも相性いいから安心してよ」などとなめらかに語ったそうだ。
「お義父さんもお義母さんも、長々と『そうか、初孫がB型か。これは先が思いやられるぞ』とか言って、少しバカにするような感じで笑ってました。めちゃくちゃ嫌な気分でしたね」
この時を境に義両親は息子から禁じられていた血液型トークを勝手に解禁。ことあるごとに千由紀さんや孫の行動を血液型基準で語りたがった。
「B型は熱しやすくて冷めやすいから、何個おもちゃ買ってもすぐ飽きられちゃう、なんて言うんですよ。子供なんてみんな大体そうじゃないですか?」
O型の性格を自画自賛する場面も多く、「自分で言ってて気持ち悪くないのかなと思いながら聞いていました」と千由紀さん。
「うちはなぜか家族全員O型だから、みんな前向きなんだよと、それは何回も聞かされましたね。誰に対してもフレンドリーだから友達も多いとか。はいはい良かったですねという感じ」
千由紀さんは度重なる血液型トークに苛立ちを覚えつつも、「こんな年寄り、いくらでもいる。いちいち気にしないようにしよう」と右から左へ聞き流すようにしていた。
「ところが、うちの親も交えた会食の席で、ついに義両親が血液型の話題をぶっこんで来たんです。うちの親は血液型での性格の決めつけが本当に嫌いなので事前に言っておかなければ……とは思っていたのですが、いざとなると言い出しにくくて、そのままになっていたんです」
義両親の血液型トークに嫌気がさしながらも、聞き流すことで苛立ちを抑えてやり過ごしていた千由紀さん。しかし後日、千由紀さんの両親との食事会の際に、舅の発言で取り返しのつかないことになってしまったという。
後編に続く
取材・文 中小林亜紀