60歳で定年。後は旅行やゴルフをしながら悠々自適に暮らす、そんな人生、今はもう過去の話。これからは60代はもちろん、70代になってなお現役がスタンダード。生活のため、そして生きがいのために働くことが求められるのだ。
日本では、23年前に老齢年金の支給が60歳から65歳へと引き上げられた。さらに少子高齢化、人生100年時代の到来など、社会の大きな変化に揉まれ、受給開始の上限年齢が75歳へ引き上げられるなどの改正が行われている。
70代になっても求められる人材とは一体どんな人なのだろう。そのひとつの鍵とも言われているのが50代でのキャリアチェンジ、そしてキャリアの再考だ。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏が語る。
「しかし、昭和世代の考え方や働き方は、とうにアップデートされていないと、転職などの働き口はない厳しい時代です。それは社内で働き続ける人にも同じことが言えます」
橋本康(51)はまさに今、そのときを迎えつつある。
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「我が社は役職定年が55歳です。僕は今、51歳でその時が刻一刻と迫っています。役職定年といえば、聞こえはいいですが、実際のところ定年前にお役御免を迎えるということです。給料が高いだけで無能な用無し……そんなレッテルを貼られるかと思うとなんともいえない気持ちです」
肩を落とす康だが、日本では多くの大企業でこのような役職定年や早期退職制度が用いられている。企業としては若い人材を投入し、新陳代謝を促したいという狙いがあるのだろう。同時に高い給料を支払うコスト面での負担も見え隠れする。
「役職がつかなくなれば、給料は20〜30%減りますし、おそらく子会社への異動が言い渡されます。同期のなかでこの残念な役職定年を迎えるのは僕1人。同期の多くはもっと早く転職をしていたり、個人事業主になっていたり……。1人だけ役員として活躍をしていますが、入社時から抜きん出た存在です。僕なんて50になっても部長ですから……情けないばかりです」
康は現在、部下30人をまとめる部長だ。仕事として主だっているのは、マネージメントだと話す。