しかし、妻はそれでも恐怖と不安を拭えず、駅前の店の近くにマンションでも借りて住まないかと提案するようになった。
「私は、この土地で暮らすということは、ここに住む人や山や川はもちろん、虫や雑草と共生するということだよ、と当たり前のことを言いましたが、彼女はもう聞く耳を持っていなかったですね」
秋に入り、虫が減り、雑草の成長が完全に止まる頃、妻は心の平穏を取り戻した。しかし、また春が近づくと、次第に不安を訴えるようになった。
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